アカザ、赤芽柏(あかめがしわ)、 アニスヒソップ、 アロエ、 いちじく、 伊吹(いぶき)、 イブキジャコウソウ、 ウイキョウ、 うこん、 ウド、
ウラジロカシ、 えんじゅ、 オオバコ、 オトギリソウ、 オナモミ、 オレガノ
かきどおし、 カキの葉、 かじめ、 カモミール、 唐松(からまつ)、 花梨(かりん)、 菊、 栗(くり)、 黒文字(くろもじ)、 月桂樹、 げんのしょうこ、
高野槇(コウヤマキ)、 高麗人参(こうらいにんじん)、 辛夷(こぶし)、 牛蒡(ごぼう)、 五木八草(ごぼくはっそう)、 米ぬか
細辛(さいしん)、 酒、 山椒(さんしょう)、 椎茸(しいたけ)、 塩、 シシウド、 紫蘇(しそ)、 生姜(しょうきょう)、すいかずら、 杉(すぎ)、
石菖(せきしょう)、 セージ、 セロリー
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「藜(アカザ)湯」
田や野原に自生する。あかざ科の一年生植物。高さ一メートルに達する。葉は三角状卵形。若芽は紅色の粉に覆われる。若葉は各種のビタミンを含み、食用になる。茎を乾かして老人用のつえとする。
アカザの葉には虫刺されに効果がある。患部の殺菌効果が期待できる。
うがい薬としても活用され適量を煎じてうがいをすると効果的。
その他、止瀉、健胃目的で使用される。精力増強にもよい。
アカザの刻みを一掴みして袋詰めし、水から沸かし、煮汁とともに風呂に入れる。
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「赤芽柏(あかめがしわ)湯」
あかめがしわ(赤芽柏)は樹高五~十メートルになるトウダイグサ科の落葉高木で、本州、四国、九州に分布し、各地の山野で普通にみられる。
漢方ではアカメガシワの樹皮を野梧桐といい、消炎、鎮痛剤として胃や十二指腸潰瘍の治療にも用いる。
できもの、はれものには葉を外用とする。
アカメガシワの葉や樹皮にはタンニン、イソクマリンが含まれこの薬湯に入浴すれば切り傷、すり傷、うちみ、できものなど皮膚の症状に効果がある。
アカメガシワ湯を作るには、夏に葉と樹皮を採って天日乾燥し、適当な大きさに刻んでおく。
一回量としてふたつかみを布袋につめて煮出し、煮出しした汁と袋を一緒に水から沸かして入浴する。
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「アニスヒソップ湯」
アニスヒソップは草丈六十~九十センチになる北米大陸原産のシソ科の多年草で、アメリカ大陸の先住民であるインデイアン では咳を治し、喉の痛みを抑える薬草として知られていた。
現在では日本のハーブ愛好家の間では広く栽培が行われている。
アニスヒソップは薄荷と同じ精油成分を含有し、ストレス解消、 安眠などの精神安定効果や疲労回復などに良い。
薬湯としては葉と茎を利用する。
生の場合は一回分として三十 センチ長さの枝先二本を細断して鍋に入れ水から火にかけて 二十分ほど煮出す。
この煮汁を漉して風呂へ入れる。
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「アロエ湯」
アロエはユリ科アロエ属の総称で、その仲間は三百種もある。
日本でアロエと呼ばれているものは南アフリカ原産のキダチアロエのことで、日本には鎌倉時代に渡来していた。
この薬のエキスは健胃薬として古くから利用されていた。
成分としてはアロエエモジン、アロエニン、バルバロインなどが含まれ火傷、擦り傷、かぶれなど皮膚の炎症に効果がある。
この風呂に入ると保湿効果があるので潤いのある肌作りに最適である。
一回分として生葉二~三枚分を用意し水洗いしてから縁のトゲを除き細かく刻み、布袋に詰めて浴槽に入れ自ら沸かして入浴する。
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「いちじく湯」
イチジクの語源は果実が一ヶ月で熟するからによる。
生薬名は無花果(むかか)というが、果実の中に花があるが人の目には見えないことによる。
イチジクは高さ三~五メートルになる小アジア原産のクワ科の落葉高木で、日本には江戸時代に移入され、 果樹として各地で栽培され、庭木としても植えられている。
イチジクの葉には蛋白質を分解する酵素であるフロックリンやクマリン配糖体が含まれており、 皮膚に滑らかさや柔軟性を与えたり、炎症を鎮めたりする働きがある。
痔疾、下剤、殺虫、イボ取りに用いられる。
茎葉を折ると白い乳液が出てくる。
これを一日数回塗るとイボ取りに効くらしい。
この葉は陰干しして乾燥させる。
なかなか乾かない場合は天日干ししても良い。
腰湯に使うと痔疾や神経痛に効果がある。
作り方はイチジクの葉一掴みを鍋に入れ六百ミリ位の水で十分ほど煎じる。
煎じ液をお湯に入れ腰湯として使う。
他にも、生葉十五枚程度を適当な大きさに刻み鍋にいれて水から日にかけ二十分ほど煮出し、煮汁を漉しとって風呂にいれよくかき混ぜて入浴する。
生葉がない場合は生薬を代用すると良い。
ひびやあかぎれ肌荒れ、イボ取りにも効果的である。
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「伊吹(いぶき)湯」
イブキ(伊吹)は幹の直径が一メートル、高さ二十メートルになるヒノキ科の常緑針葉高木でわが国で自生するほか、神社,寺社、公園にも植栽される。
イブキの葉をちぎると芳香性の精油や樹脂が含まれ、この薬湯に入浴すれば保温作用や鎮痛作用によって神経痛、リュウマチ、関節痛、腰痛がやわらぐだけでなく身体が温まって風邪の予防にも効果的である。
一回分の使用量としては二十センチの枝先一本または葉なら二、三枚用意する。
適当な大きさに刻んで鍋に入れ二十分ほど煮出す。
煮汁を風呂に入れかき混ぜて入浴する。
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「イブキジャコウソウ湯」
イブキジャコウソウは、高さ十~十五センチ程度のシソ科の半落葉小低木で、北海道、本州、九州といった日本各地に分布し、平地から山地までの日当たりの良い場所に好んで生える。
伊吹山に多く生息し麝香に似た香りがする。
有名なタイムの仲間である。
イブキジャコウソウには、チモール、カルバクロール、パラシメン、ピネン、リナロールなどの精油成分が含まれるため 殺菌作用、発汗作用、解熱作用、鎮痛作用に優れ、これを用いた薬湯は寒け、頭痛、発熱、せき、のどの痛みなど風邪の症状に効果がある。
五~七月頃の開花期に地上部全草をとって乾燥保存しておく。
一回分使用量として、乾燥したもの一掴みを鍋に入れ、水から火にかけて二十分ほど煮出し、この煮汁を湯船に入れる。
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「ウイキョウ湯」
ウイキョウはヨーロッパ原産のセリ科の多年草で、日本にはかなり古い時代に輸入され、薬草として栽培されているほか植栽もされている。
成分としてはアネトール、エストラゴール、リモネン、α-ピネン、アニスアルデヒドなどが含まれ、血行促進、保温、発汗、鎮痛などの作用があり、こ の薬湯に入ると、せきや痰、のどの痛み、頭痛などの症状や、冷え性、神経痛、リュウマチ、腰痛などの痛みをやわらげる効果が得られる。
一回につき一~一.五つかみを袋に入れこの袋ごと湯船に入れて入浴する。
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「うこん湯」
うこんは草丈六十~百センチの草丈になる熱帯アジア原産の ショウガ科の多年草で、日本には江戸時代中期に移入され、 主に薬用として九州南部や奄美沖縄地方で栽培されているほか、これらの地域では一部で野生化もみられる。
カレーの主原料としても知られる。
ウコンの根茎には、クルクミンのほか精油成分も含まれており抗菌、鎮痛、血行促進 の働きがあり、この薬湯に入ると、リュウマチ、腰痛、神経痛、肩こり、生理不順、こしけなど婦人病にも効果的である。
ウコンは半つかみを袋に入れ、上から熱湯をかけて十五分~ 二十分ほど蒸らし器にたまった汁と袋とを風呂に入れてよくかき混ぜてから入浴する。
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「ウド(独活)湯」
ウドの大木は大きくても、役に立たないことの代名詞に使われている。
特別に大きいわけでもなく雑草のなかでは目だって大きいということか。
ウドは晒して酢味噌で食べるとなかなか美味であるが、生薬は独活と称し漢方では古くから使われている。
本州、四国、九州といった日本各地に生育しているのを見ることができる。
中国大陸などにも分布するセリ科の多年草で、シシウドや近縁植物の根と根茎を利用する。
日本産の独活といえば、ウコギ科のウドをさしている。
側根はきょう活といっている。
成分としてはクマリン誘導体のほか、アンゲリカール、アンゲリコンオストールが確認されている。
煎じて飲めば筋肉や関節の痛み、手足のけいれん、腰痛、しびれなどにいいことが知られている。
薬湯(浴用料)として利用する場合は、九月頃食用にならなくなった茎葉を根ぎわで刈り取り、五センチほどに刻み、陰干しする。
乾燥したら二掴みほどを布の袋に入れ鍋に水を張り十分ほど沸かす。
煎じた液と布袋を一緒に浴槽に入れ薬湯料とする。
この薬湯は神経性やストレス性の肩こりに良いといわれる。
張り詰めた神経をほぐし、血行も良くなり効果的だと評判である。
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「ウラジロカシ湯」
ウラジロカシは十五~二十メートルの高さになるブナ科の常緑高木で、太平洋側では宮城県以西、日本海側では新潟県以西 の本州と四国、九州に分布し、山地に多く生えるほか、公園や庭にも植えられる。
葉の裏面は粉白色しているのが名前の由来で、 成分としてはタンニンやリグニンが含まれ収斂作用がある。
この薬湯で入浴すると切り傷、火傷、擦り傷、ニキビ、肌あれなどの肌荒れや痔疾に効果がある。
一つかみを鍋に入れ、水から火にかけて二十分ほど煮出しその煮汁を漉しとって、風呂にいれ良くかき混ぜて入浴する。
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「えんじゅ湯」
エンジュは高さ十五~二十メートルになる中国大陸原産のマメ科の落葉高木で、日本には古くに薬木として輸入され、現在では、公園、街路樹、庭などに植えられるほか、山野に野生化している。
エンジュの花の蕾は槐花、果実を槐角、葉を槐葉と呼んでいる。
主として止血薬として利用されていた。
主成分はルチン、トリテルペン、カンフェロールなどが含まれている。
エンジュの湯に入浴すると、切り傷、擦り傷を はじめ痔疾、ニキビの効がある。
一回分二つかみを鍋に入れ、水から火にかけて、その煮汁を漉しとって、風呂に入れ良くかき混ぜて入浴する。
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「オオバコ湯」
オオバコ(車前草)は草丈十~三十センチになるオオバコ科の多年草で、平地や山地を問わず見られる。
車のわだちに沿って群生するところから車前草と呼ばれる。
種子は車前子と呼び、消炎、利尿、咳止めに利用する。
オオバコには配糖体のアウクビン、フラボノイドのプランタギニン、粘液多糖体が含まれ消炎作用がある。
この薬湯に入浴すれば、切り傷、擦り傷、できもの、はれもの、ニキビ、あせも、湿疹などの皮膚疾患に効果がある。
夏に花をつけた全草を採り天日で乾燥して細断したものを用いる。
一回分として二~三掴みを採って布袋に入れ、弱火で煮出し、その煮汁と一緒に湯船へ入れる。
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「オトギリソウ湯」
オトギリソウは草丈三十~五十センチになるオトギリソウ科の多年草で、全国に分布し、日のよくあたる山野に自生する。
夏に黄色の五弁花を開く。
オトギリソウにはいくつかの変種があるが、いずれも主成分は変わらず同じ目的で利用される。
創傷、打撲、生理不順、神経痛、リュウマチなどの治療に用いられている。
薬用には八~十月、地上部の茎葉を根ぎわから刈り取り、日に干す。
生薬名は小連翹です。
乾燥させた地上部を刻み、木綿の袋に二~三握りほど詰め、熱湯をかけて十~十五分ほど蒸らす。
その汁と袋を風呂にいれよくかき混ぜてから入浴する。
ゲンノショウコを加えるときは同比率で加る。
いずれもタンニンを多く含む植物で、タンニンが湯に溶けて、冷え性を治すのではないかと考えられる。
ゲンノショウコを加えるときは同比率で加えます。
いずれもタンニンを多く含む植物で、タンニンが湯に溶けて、冷え性を治すのではないかと考えられます。
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「オナモミの薬湯」
荒地、道端に自生する一年草で全体に短い毛がある。
葉は有柄で、互生して浅く三つに裂けている。
オナモミはマムシにかまれたときの解毒薬として生の葉を揉んでつけると効果があるといわれる。
果実には黄色の油状物質を含み、種子には脂肪油がある。
虫刺されには生の葉の絞り汁をつけるとよく、あせもや皮膚病には、陰干しした葉を浴湯料として使う。
二掴みをガーゼの袋に入れ浴槽に入れると良い。
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「オレガノ湯」
オレガノは三十~六十センチの草丈になるヨーロッパ原産のシソ科の多年草で和名でハナハッカ(花薄荷)と呼ばれる。
7月~8月頃枝先に白から淡紅色の小さな花をたくさんつける。
葉にはコショウに似た強い香りがあって、ピザやパスタの香辛料に用いるほかハーブ・テイーにも利用される。
強壮、鎮痛、殺菌の働きがあり、神経痛、筋肉痛、頭痛などのほかせきやのどの痛みにも効果がある。
皮膚から吸収される薬湯では、ストレス解消、安眠、疲労回復にも効果がある。
夏に花をつけた地上部を切り取り、風通しのいい日陰に吊るして乾燥させ細断する。
一回分として二~三つかみを袋につめ、湯にひたして十五分ほど蒸らし、その汁と袋を風呂に入れよくかき混ぜて入浴する。
カ行薬湯
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「かきどおし湯」
かきどうしは生薬名を連銭草といい、茎の高さ五十センチに なるシソ科のつる性多年草である。
全国に分布し、平地から低山地までの日当たりの良い野原 や畑地、庭などに生える。
地を這って垣根を越えるというのが名前の由来である。
成分としてはタンニンのほか リモネンなどの精油成分、ビタミンCが含まれ、消炎、鎮痛、収斂、新陳代謝の働きがあり、薬湯として利用 するとうちみ、ねんざ、あざ、切り傷に良い。
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「柿葉湯」
柿はカキノキ科の落葉低木で、日本、中国に産し栽培品種として広く栽培される。
甘がき渋柿があるが、葉を用いる場合は甘がき、渋柿どちらでも良く、薬湯にも利用する。
柿の葉にはタンニンやビタミンCが豊富に含まれるほかビタミンA、K、Pが含まれる。
フラボノイドのアストラガリンなども含まれ止血、殺菌、消炎作用などの作用に優れている。
この薬湯で入浴すると外傷、ニキビ、吹き出物、湿疹などによる炎症を癒すとともに肌のあれや乾燥を抑え、 ハリのある健康な美肌作りにも効果的である。
柿湯を作るには、夏に柿の葉を摘んで、軽く蒸してから天日でカラリと乾燥させておく。
一回につき三つかみを袋につめ、浴槽に入れて水から沸かして入浴する。
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「かじめ湯」
カジメは褐藻類コンブ科カジメの海藻で、関東以西の太平洋岸と四国、九州に分布する。
岩の上に根を下ろし円柱形の硬い茎を伸ばし、その先に幅の広い葉を広げ一~二メートルに成長する。
根を深くはらないため、海が荒れると、岸辺に大量に漂着したりする。この葉の部分を薬湯にする。
カジメにはアルギン酸やヨードのほかカリウム、鉄、フッ素、ビタミンなどが豊富で、この薬湯に入浴すれば新陳代謝を促進して皮膚組織を活性化させ、湿疹、かぶれ、やけどなど皮膚の症状には効果的である。
カジメは三日ほど乾燥させ、一回分として一株を沸いた風呂に入れる。
成分が出て湯が褐色になったところでよくかき混ぜて入浴する。
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「カモミール湯」
カモミールはヨーロツパ南、東部原産のキク科の一~多年草 でジャーマン種、ローマン種、ダイヤーズ種とがある。
通常は前二者を指す。
このうち、ジャーマン・カモマイル は日本ではカミツレとよばれ、江戸時代に渡来して以降 、 薬用栽培がおこなわれており、現在ではローマン種のほうもハーブ園で栽培されている。
ジャーマン・カモマイルには 精油のほか、フラボノイド、クマリン化合物などが含まれ、この薬湯に入浴すると、リュウマチ、神経痛、腰痛、筋肉痛、 手足のしびれ、湿疹、外傷、ジンマシン、かぶれ、ヘルペスにいいほか、精神の安静にはカモミールの花が使われたりする。
一回分二つかみを袋に詰め、風呂に入れ入浴する。
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「唐松(からまつ)湯」
唐松は落葉松で、幹の直径が二.五メートル、高さ五十メートルになる日本特産の落葉性針葉高木で、天然分布では宮城県から石川、静岡などの本州中部地方に限られる。
全国の山地に植林はされている。
カラマツには精油、樹脂、コハク酸などが含まれ、樹脂にはテレピン油が含まれる関係で血行促進や保温にも効果がある。赤松葉がよく用いられる。気管支の炎症、のどの痛み、神経痛、腰痛、肩こり、打ち身、捻挫にも効果がある。
一回分の使用量として、枝先三十センチのもの三~四本を用意し、これを適当な大きさに細断して鍋にいれ水から火にかけて三十分ほど煮出す。
この煮汁を布巾で漉して浴槽に加えかき混ぜる。
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「花梨(カリン)湯」
カリンは高さ六~八メートルになる中国大陸原産のバラ科の落葉中低木で、日本には古くに渡来し、東北地方から関東甲信越地方を中心に広く栽培されている。
果実酒、砂糖漬け、ジャムとして利用されてきた。
リンゴ酸やクエン酸を含むため、古くから咳止めや喉の痛みに利用されてきた。
この果実には強い芳香があるので、風邪の予防、疲労回復、美容に効く薬湯である。
香りがよいので、精神を安定させ、ストレスの解消に良い。
一回分としては大きめの果実なら一個、小さめなら二個を輪切りにしたものを沸かした湯に浮かべて入浴する。
又は刻み一掴みを袋に入れお湯の中に入れる。
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「菊湯」
菊は菊花という生薬名で販売されている。
わが国で多い品種は リュウノウギク、ノギク、ヤマギク、ゼニキク、イエギク、イソギク、ノジギクなどであり、いずれも薬湯として利用できる。
一回分として二つかみを袋に入れ、湯をかけて十五分ほどむらし、その液と袋を風呂にいれますが、少し多めに袋に入れ湯船で自ら沸かしても良い。
菊の香りが楽しめ、神経痛、リュウマチ、腰痛、肩こり などに効果がある。
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「栗(くり)湯」
栗は樹高十五~二十メートルになるブナ科の落葉高木で、 北海道から本州、四国、九州まで分布し各地の山野でみられるほか、果樹としても栽培され公園や庭木に植えられる。
薬用として利用するときは自生種を用いたほうが良い。
クリの葉や樹皮、イガにはタンニン、クエルセチンが多量に含まれ止血や消炎作用があるから、この薬湯で入浴すると きりきず、すりきず、やけど、湿疹、吹き出物などに良い。
葉は夏に、樹皮やイガは秋に天日で乾燥させる。
葉や樹皮はふたつかみ、イガなら十個分を鍋で二十分ほど 煮出し煮汁を漉しとり、これを風呂へ入れる。
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「黒文字(くろもじ)湯」
クロモジは高さ二~三メートルになるクスノキ科の落葉低木で、本州、四国、九州に分布している。
庭木としても植えられ枝を折るときに特有の香りがあり、楊枝の材に利用されることで知られている。
精油成分のリナロール、ゲラニオール、シネオール、テレピネオールが含まれ皮膚病や精神安定に利用されたり、香料としての用途もある。
これらの成分が入った薬湯で入浴すると疲労回復、ストレス解消ばかりでなく皮膚病や安眠にも効果がある。
枝を折って二~三センチの長さにきったものを一回分としてつかみ袋につめて浴槽に入れ水から沸かして入浴する。
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「月桂樹の薬湯」
月桂樹は地中海沿岸地方の原産で、わが国には二十世紀初頭に明治になってからフランスより苗木が入ってきた。
高さ八~十二メートルになるクスノキ科の常緑広葉樹で、雌雄異株の常緑高木。
古代ギリシャのオリンピックの勝者や、功績のあった人に枝葉で冠を作り、送る習慣はよく知られている。
今でも主として記念樹や庭木として植えられている。
香料として利用されるローレル、ベイリーフはこの月桂樹の葉を乾燥させたものである。
料理では肉や魚の除臭に使われる。葉を八~九月頃採取し、日陰で乾燥させる。
葉をちぎると特有の強い芳香を放つが、シネオール、オイゲノール、ゲラニオールなど精油成分を含むからで、 これを用いた薬湯に入浴すると、神経痛,リュウマチ、しもやけ、凍傷など幅広く効果がある。
一回分の使用量として生薬、40~50枚用意し、鍋に入れて水から火にかけ二十分ほど煮出す。
この煮汁を漉しとって風呂にいれ、よくかき混ぜてから入浴する。
もしくは、乾燥した月桂樹葉を一掴み浴槽に入れる。
この薬湯には入れば勝利の美酒を味わえるかも。
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「げんのしょうこ湯」
げんのしょうこは草丈三十~五十センチになるフウロソウ科の多年草である。
全国に分布し日当たりのよい平地から産地に見られる。
成分としてはクエルセチン、カンフェロール、アセチルコリンなどが含まれ、薬湯として利用する場合は冷え性、生理不順などの 婦人病や、下痢腹、あせも、しもやけ、にきび、かぶれ、湿疹などの症状に良い。
一回分として三つかみを布袋につめ、湯をかけて 十~二十分ほどむらしこの汁と袋を一緒に入れて入浴する。
又、ヨモギと半々にいれて入浴すれば効果は一層たかまる。
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「高野槇湯」
コウヤマキは樹高が三十~四十メートルになる日本特産のスギ科の常緑針葉高木で、高野山に多いからこの名がある。
本州、四国、九州に分布し海抜六百~千メートルの山地に生える。
水に対する耐久性が強いため、船舶材や風呂桶材として利用されてきた。
この材で作った桶で入浴すればその成分が風呂に浸出して薬湯に入ったのと同じ効果がある。
コウヤマキに含まれる精油や樹脂には、血行促進効果と同時に精神安静の効果がある。
また、疲労回復、ストレス解消などの効果が期待できる。
一回分の使用量として、生葉百から百五十枚摘み取って布袋につめ袋ごと鍋に入れ水から火にかけ十五~二十分ほど煮出し、この煮出し汁と袋を同時に風呂に入れる。
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「高麗人参湯(こうらいにんじんとう)」
人参は御種人参のことで朝鮮人参とも呼ばれる。江戸時代から幕府の奨励策により長野、福島、島根などで栽培されはじめた。
人参にはギンセノサイド(サポニン)、パナセン(セスキテルペン)、パナキシノール、ニコチン酸などが含まれ、 細胞賦活、強精、精神安定、新陳代謝の促進など優れた働きがある。
この薬湯に入浴すると、皮膚を清浄にし、炎症を抑え、老化を防ぎ、きめの細かい美肌作りに高い効果があるだけでなく、 ストレス解消、安眠、疲労回復に効果がある。
一回分として乾燥したヒゲ根一掴みを袋に入れ、十五分ほど煮出し、この袋と煮汁を風呂に入れよくかき混ぜてから入浴する。
朝鮮人参は高価だから安い髭の根で十分である。
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「辛夷(こぶし)湯」
辛夷は高さ十~十五メートルになるモクレン科の落葉高木で全国の山野に自生するほか、公園や庭にも植えられている。
この辛夷の花にはシネオール、オイゲノール、シトラール、カビコール、α-ピネン、オイゲノールなどの精油成分が含まれ 、入浴によって鼻水や鼻ずまり、頭痛などの風邪
の症状や鼻炎、ストレス解消、安眠、疲労回復、美容などに効果がある。
一回分として一つかみを袋に入れ、これを沸かした湯に入れ入浴する。
花をそのまま湯に浮かべても良い。
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「牛蒡(ごぼう)湯」
ゴボウ(牛蒡)はヨーロッパからアジア中部が原産のキク科の越年草で日本には十世紀初頭に移入され、
広く栽培されるようになった。
もともと原産地方ではこれを食する習慣はなく、根や種子を薬用として利用してきた。
牛蒡の主成分はイヌリンであるが、タンニン、精油、苦味素、粘液物質などが含まれており、すぐれた血液浄化作用がある。
そのためヨーロッパでは主として、外傷、ニキビ、しっしん、かぶれなどの皮膚のトラブルや肝臓、腎臓、膀胱といった排出をつかさどる臓器の機能促進の薬として利用されてきた。
この薬湯に入浴すると、その浄化作用や代謝促進の作用によってかぶれ、あせも、にきび、できものなどの皮膚の炎症や、関節や筋肉の炎症にも優れた効き目を表す。
春に葉をとり、天日で乾燥したものを利用する。
一回分の使用量として二~三つかみを袋に入れ、熱湯をかけて十五~二十分ほどむらし、その汁と袋を風呂に入れる。
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「五木八草湯(ごぼくはっそうとう)」
五木とは五種類の薬木、「八草」とは八種類の薬草のことだから、 五木八草湯とは五種類の薬木と八種類の薬草を混ぜ合わせて作った薬湯」という意味になる。
桑、えんじゅ、柳、桃、梶などと いわれている。
桃、梶を楮、楡に置き換えたりといくつかの 類似の処方はあるようである。
八草とは菖蒲、艾葉、オオバコ、ハスの葉、オナモミ、忍冬 (スイカズラ)、馬鞭(クマツヅラ)、ハコベをさしている といわれる。
これらの薬木と薬草を混ぜ合わせる。
袋に入れて薬湯料とする。
薬湯料として有効なものが選択されている。
五木八草湯(ごぼくはっそうとう)は矢傷、槍傷、刀傷の治療 のために古くは室町時代から使われていたようだ、収斂、消炎、 細胞賦活の作用を期待したものでした。
薬草だけではなく 「信玄の隠し湯」で知られるごとく傷を癒す温泉の発掘も さかんに行われていたようだ。
それと疱瘡の流行や大地震、水害などの傷病者の治療用に自然発生的に生まれたものということができるのではないか。
五木八草湯(ごぼくはっそうとう)は創傷、やけど、かぶれ、ひび、あかぎれなどに幅広く利用された。
大衆浴場である銭湯が広く一般に普及したのは江戸時代になってからだといわれる。
大阪落城から十数年を経た寛永時代にすでに湯女風呂が江戸で流行したというのには驚かざるをえない。
この点から考えると風呂は特殊浴場のほうが本家であるような気もする。
しかし、この湯女風呂は風紀の乱れを理由にたびたび取り締まられていたようで、今とあまり変わらないような気もする。
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「米ぬか湯」
収穫された米にはモミ殻がついており、このモミ殻を取りさったものを玄米という。
玄米には、果皮や種皮、湖粉などのヌカ層と胚芽とが付着している。
この玄米を精白すると、付着していたヌカ層や胚芽が後に残るが、これらが混じりあった残りカスのことを米ヌカと呼んでいる。
ヌカにはリノール酸やビタミンB1、Eなどが豊富に含まれており、ヌカ漬けの床として利用されている。
米ヌカ湯を作るには米ぬか五百グラムをつめた布袋を風呂に入れて、お湯のなかでよくもみならが入浴する。
布袋で体をこするとさらに効果がある。
この風呂に入ると肌の荒れをおさえしっとりしたもち肌が作られる。
サ行薬湯
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「細辛(さいしん)湯」
ウスバサイシンは草丈十センチ程度のウマノスズクサ科の多年草で、本州、四国、九州に分布し、湿り気のある山地の林床に多くはえる。
根が細く、強い辛味を持つことから細辛と呼ぶようになった。
成分としてはメチルオイゲノール、アサリニン、リモネン、α-ピネンなどの精油成分が含まれ、解熱、鎮痛、抗菌、鎮静などの働きがある。
この薬湯に入浴すると、神経痛、リュウマチ、腰痛などの痛み、疲労回復、ストレスの解消に効果がある。
一~二つかみを湯船に入れると良い。
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「酒湯」
酒湯とは日本酒を入れたお風呂のことで、この風呂に入れば、血管を広げて血行を促進する作用があるばかりでなく、 体内に蓄積した老廃物を取り除き、身体を温める作用がある。
スポーツ選手が傷めた肘や肩、関節などに日本酒を擦り込んでマッサージ治療を行うのはこのためである。
この風呂に入れば神経痛、リュウマチ、腰痛、肩こり、打ち身などに良い。
体温より一から二度高めに沸かした風呂に、一回分として日本酒四合を加え、よくかき混ぜて入浴する。
日本酒は安い物で良い。
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「山椒(さんしょう)湯 」
山椒は高さ二~五メートルになるミカン科サンショウ属の 落葉低木で、全国の平地から山地まで広く自生する。
この山椒の葉や茎、種子を薬湯に利用する。
特有の香りがあるが、これはシトロネラールやジペンテン、ゲラニオールなどの精油成分のせいである。
神経痛、リュウマチ、痛風、頭痛、疲労回復、安眠の効果がある。
一回の使用量は手で一つかみで布袋に入れ、あらかじめお湯で煮出しておく。
この汁と袋をお風呂に入れる。
肌の弱い人は使わないほうが良い。
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「椎茸(しいたけ)の薬湯」
しいたけはひらたけ科のキノコで、春と秋に、シイ、カシ、コナラ、クヌギ、ミズナラなどの広葉樹の倒木や切り株、枯れ幹などに発生するほか原木やおがくず菌床による栽培が盛んに行われている。
しいたけ栽培の観光農園ではすでにシイタケ風呂を開催していてなかなかの好評である。
しいたけにはカリウム、リン、鉄、ナトリウムなどのミネラルが多いうえ、ビタミンB群やDも含まれているから、皮膚の活性化や保温がよく、この薬湯に入浴すると、にきび、ひび、あれ肌、傷の後遺症などによいほか、風邪の予防や疲労回復にも役立つ。
一週間ほど天日で乾燥し干ししいたけを作っておく。
一回分の分量として、二つかみ分のシイタケを細かく刻んで袋に入れ、袋ごとぬるま湯にひたして半日ほどおき、このひたしておいた汁と袋をお風呂に入れよくかき混ぜて入浴する。
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「塩湯」
江戸時代から塩湯治は海岸地帯の各地で行われていた。
海水には塩分を初めとしていろいろなミネラルが含まれており、それを沸かした風呂に入浴すると身体は芯から温められる。
神経痛、関節痛、筋肉痛、腰痛をはじめとして、ねんざ、肩こり、冷え症、生理不順などにも効果がある。
アトピー性の湿疹などにも利用される。
塩湯に使う塩は自然塩が原則である。
一回の使用量は、自然塩を一掴み(約三十グラム)を風呂に入れてよくかき混ぜてから入浴する。
体温より、二~三度高いくらいのぬるめの風呂に入るのがコツである。
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「シシウド湯」
シシウドは草丈二メートルになるセリ科の多年草で、本州、四国、九州に分布し、平地から産地の湿り気のあるところに好んで生える。
漢方ではこの根を独活(どっかつ)と呼び、主として、風邪やリュウマチ、神経痛、歯痛、頭痛などに用いる。
根には精油、脂肪油などが含まれ、血行促進、発汗、頭痛 に優れ、この薬湯に入浴すると婦人病、神経痛、リュウマチによいといわれる。
一回分は両手一杯を袋につめ水から沸かす。
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「紫蘇(しそ)湯」
シソは草丈数十センチになる中国大陸原産の一年草で日本には古い時代に渡来して薬草、食用として栽培されているほか、各地で広く野生化している。
シソにはアオジソ、チリメンジソ、チリメンアオジソ、マダラジソ、カタメンジソなどに区分される。
成分的には大差はない。
ペリルアルデヒド、リモネン、アルファピネンなどの精油成分が含まれ、入浴すれば、神経痛、リュウマチ、腰痛、関節痛 をはじめ、風邪の諸症状、冷え性などに効果がある。
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「生姜湯」
ショウガ科のショウガの根茎。
現在日本市場には「生姜」と「乾姜」の二種があります。
生姜はショウガの根茎のコルク皮を去り、そのまま乾燥したもの。
乾姜は蒸乾したもの。中国産のものには皮つきのもの(四川省産の「均姜」もあります。
古来漢方処方で用いられる生姜は、いわゆる「鮮姜」のことで、ショウガ科の生の古根 (ヒネショウガ) をそのまま用い、乾姜と方書に記されたものは乾燥品を用います。
現在市場の生姜は漢方でいう「乾姜」のことで「乾生姜」と称しています。
精油を0.25~3.0%含有し、辛味成分0.6~1.0% (ジンゲロール、ジンゲロンなど) が含まれている。入浴すれば、神経痛、リウマチ、腰痛、関節痛 をはじめ、風邪の諸症状、冷え性などに効果がある。
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「すいかずら湯」
スイカズラはスイカズラ科のつる性常緑大本で、全国に分布し 、平地から山地まで日当たりのよい山野で普通にみられるほか、庭木として植えられる。
花を吸うと甘い蜜の味がする。
初夏に咲く花に最初は純白だが、時がたつと黄色になり、一つの株に若い白花と黄色い老花が同時に咲きみだれるところから金銀花、冬でも枯れ落ちない茎葉は忍冬(にんどう)とよばれ、腰や関節の痛み、うちみ、はれもの、解熱に利用される。
この薬湯に入浴すると、外傷による化膿やできものなどの皮膚の炎症、かぜ、痔疾、腰痛、関節痛、打ち身に効果がある。
生薬二~三つかみを煮出し、煮汁を漉して風呂にいれ、よくかき混ぜて入浴する。
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「杉(すぎ)湯」
杉は樹高二十~四十メートルになる日本特産のスギ科の常緑針葉高木で本州、四国、九州に分布し、各地で植林も行われている。
スギの材や枝葉には精油成分や樹脂が多く含まれており、アカマツなどと同じように、皮膚の刺激や血行促進の作用がある。
この薬湯に入浴すれば疲労回復、ストレス解消、安眠などのほか神経痛や腰痛などの痛みを和らげたり風邪の予防や冷え性にもいい。
生のスギの葉を利用する。
一回分として三掴み鍋に入れ水から火にかけて煮出し、煮汁を漉しとって風呂に入れよくかき混ぜてから入浴するといい。
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「石菖(せきしょう)湯」
石菖は水辺に生えるサトイモ科のショウブ属の常緑 多年草で本州、四国、九州に分布し江戸時代から観賞用として栽培されている。
菖蒲と似ているが全体に小型で、菖蒲と同様の効果がある。
根にはβーアザロン、カリオピレン、セスキテルペンなどの精油成分が含まれ鎮静、鎮痛の効果があり、リュウマチ、神経痛、腰痛 関節痛、痛風などの痛みを抑える。
また、ストレス解消、安眠にも良いとされる。
根を掘り取って洗い適当な大きさに切断し天日で乾燥し、保存する。
一握りを袋に詰めて煮出し、袋とともに入れる。
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「セージ湯」
セージは草丈三十~七十センチになる地中海沿岸地方原産のシソ科の常緑小低木で、日本名はヤクヨウサルビアといっている。
グリーン・セージ、アメリカン・セージ、スパニッシュ・セージ、ダルマチアンセージなど七百五十種以上の品種があるといわれる。
セージ類にはカンフェン、ピネン、リモネン、シネオールなどの精油成分が含まれ、消炎、収斂、殺菌、消化促進などの働きを持っている。
セージ類にはホルモン前駆体も含まれるため、この薬湯で入浴すると冷え性、生理不順、更年期障害などに著しい効果があるほか、風邪の諸症状、神経痛、腰痛などに効果がある。
夏に花のついた茎葉を採り、陰干しで乾燥したものを細断して使う。
一回分一~二掴みを袋につめ、浴槽に入れてから沸かして入浴する。
妊娠中の女性は入るのは避けたほうがいい。
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「セロリー湯」
セロリーは高さ五十センチから九十センチになるヨーロッパ原産のセリ科の一~二年草で野菜として広く栽培されている。
古くから移入され栽培されていたようである。
セロリーにはピネン、ミルセン、リモネン、セリネンなどの精油成分やビタミンCが含まれ鎮静、強壮作用がある野菜として知られている。
この薬湯は鎮静効果が高く、疲労回復ストレス解消、安眠の効果を目的に利用される。
夏から秋に茎や葉をとって一~三センチに細断する。
一回分の使用量として三~四つかみを布袋につめ、この袋をわかしたお湯に入れる。
タ行薬湯
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「大根湯」
ダイコンは地中海沿岸地方の原産といわれるアブラナ科の一年草で、日本には千二百年前に渡来し、以来重要な根菜として広く栽培が行われてきた。
春の七草の一つスズシロはこのダイコンのことである。
このダイコンの薬湯には根ではなく葉を使う。
ダイコンの葉にはビタミンA,B1,B2,C,E、Ca、鉄、Naなどのミネラル、葉緑素などが豊富で血行促進、保温、殺菌などに優れた効果がある。
ダイコンの薬湯は冷え性、神経痛、腰痛などに広く使われてきた。
一回分の使用量として一本分の葉を用意し日陰に二,三日干して半干しにする。
これを細断して布袋につめ、湯船に入れ水から沸かして入浴する。
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「タイム湯」
タイムは十~三十センチの高さになる地中海沿岸地方原産のシソ科の常緑小低木で、和名はタチジャコウソウという。
タイムにはオレンジ、マツ、レモンの香りをもつものの他いろいろな品種がある。
葉をマリネやソース類、シチュー、スープ類の香辛料として使う。
数種の精油成分が含まれていて興奮作用、殺菌作用に優れ、神経衰弱、ノイローゼの治療や風邪、気管支炎などにも使われる。
この薬湯で入浴すれば気分が落ち込んだときの精神回復や精神の高揚に効果がある。
夏に花をつけた枝先を採って天日で乾燥し、刻んでおく。
一回分として二つかみを袋に入れ、湯にひたして十五~二十分蒸らし、その汁と袋を風呂に入れ、よく混ぜてから入浴する。
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「ツガ(モミ、トウヒ)の薬湯」
同じマツ科のトウヒ、ツガ、モミの仲間も樹木の薬湯として利用される。
エゾマツ、トウヒ、ハリモミ、ツガ、コメツガ、モミ、ウラジロモミ、シラビソ、オオシラビソ、トドマツなどはすべて利用できる。
これらは高地の針葉樹なので、クリスマスのツリーを利用するといい。
まず軍手をはめて防備しよう。
葉を集め布袋につめて湯船にひたす。
一回の使用量は生葉で二百五十グラムぐらいが適当だろう。
この風呂に入ると精油成分の作用で精神疲労に効果がある。
ストレスの解消にも効果的である。
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「唐辛子(とうがらし)湯」
トウガラシは南米大陸原産のナス科の一年草で、日本には古い時代に渡来し、香辛野菜や薬用として各地で栽培されている。
トウガラシにはウワムキトウガラシ、ゴシキトウガラシ、ヤツブサ、シシトウガラシなどいろいろ種類があり、薬用として適するのはウワムキトウガラシ(タカノツメ)やヤツブサだろう。
トウガラシの辛味成分はカプサイシン、ダイドウカプサイシンなどでこれには血管を拡張して血液循環を促進する作用や抗菌作用がある、トウガラシの薬湯は体を温め、風邪のほか、冷え性、神経痛リュウマチ、腰痛などに効く。
一回分にはタカノツメ数本と乾燥したミカンの皮(陳皮)二個分を用意し、共に細断して布袋につめる。
これを風呂に入れ水から沸かして入浴する。
皮膚の弱い人 には不向きである。
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「当帰(とうき)湯」
トウキは草丈六十~九十センチになるセリ科の多年草で、関東地方から中国地方の山地にかけて自生するほか、薬草として 北海道、奈良県、和歌山県に栽培される。
トウキの根にはブチリデン・フタリドなどの精油とベルカプチン、β-シトステロールなどが 含まれていて、内服すれば貧血、冷え性、生理不順、不妊症、更年期障害、ヒステリーなどに使われるほか、薬湯として入浴する場合は冷え性、更年期障害、ヒステリーに効果がある。
一回分としては一掴みを袋に詰め、浴槽に入れて水から沸かして入浴するか、袋ごと十五~二十分煮出し、その煮汁と袋を風呂に入れ、よくかき混ぜて入浴する。
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「トウヒ湯」
トウヒは幹の直径一、三メートル、高さ四十メートル近くになる常緑針葉高木である。
北関東から紀伊半島にかけての本州 中央部の山地に分布し、建材としても使われる。
このトウヒには精油、樹脂、ビタミンCが含まれモミと同じように血行促進の 働きがあるから、せきや痰を鎮めたり、のどの痛みを和らげるなど風邪の初期症状に効果を発揮するほか、体を芯から
あたため、リュウマチや神経痛、腰痛、痛風 などの痛みをやわらげたり、肩こり、打身、ねんざにに効果がある。
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「どくだみ湯」
ドクダミは草丈二十~四十センチになる日本特有のドクダミ科の多年草で、本州、四国、九州」に分布し、平地から低山地までごく普通にみられる。
特有の臭気があるが、乾燥すれば消失する。
生薬名を十薬といっている。
クエルシトリン、イソクエルシトリン、脂肪族アルデヒドが含まれ、抗菌、解熱、 解毒などの働きがある。
この薬湯に入ると、きりきず、すりきず やけど、できもの、あせも、湿疹などに効果がある。一回分として生薬三つかみを袋に詰め、湯船にいれ水から沸かして入浴する。
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「栃の木(とちのき)湯」
トチノキは高さ二十~三十メートルになるトチノキ科の落葉高木で、北海道、本州、四国、九州に分布し街路樹、公園、庭木として植えられている。
マロニエもこの仲間である。
トチの実は優れたデンプン質のため救荒食として利用されてきた。
サポニン、タンニンが含有される。外皮や樹皮にはクマリン配糖体、フラボンなどが含まれ、薬湯にすると血行を促進して身体を温め神経痛、リュウマチ、痛風によい。
一回分として、トチの実十五個分の外皮を叩いて砕き一晩水にひたしておく。
翌朝水を換え十五分ほど煮出し、その煮汁を使う。
ナ行薬湯
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「ニワトコ湯」
ニワトコは高さ三~六メートルになるスイカズラ科の落葉小高木で、全国の山野に広く自生するほか、庭木としても植えられます。
外科手術が発達していなかった頃、このニワトコの黒焼きを骨折治療に用いたところから、漢方ではその茎を「接骨木」 と呼び、鎮痛、消炎、利尿に利用してきた。
ニワトコにはトリテルペンが含まれ、この薬湯に入浴して関節炎、関節痛、うちみ、ねんざの治療に使う。
一回分として三百~三百五十グラムを袋に入れ熱湯をかけて二十分ほどむらし、この液と袋の両方を風呂に入れよくかき混ぜて入浴する。
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「にんにく湯」
にんにくは滋養強壮、疲労回復の食品として広く知られている。 あの強い香りの主成分はアリシンで強い抗菌作用があり、気管支炎、風邪などの症状を緩和する。
毛細血管を拡張し、血液の循環もよくする。
アレルギーの症状をおさえるので、ぜひ試してもらいたい。
アレルギー性皮膚炎の人にはにんにくをスライスして、乾燥させ袋に入れてお風呂に浮かせる。
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「ねむの木湯」
ネムノキは高さ十メートル近くになるマメ科の落葉高木で、本州、四国、九州に分布するほか、公園や庭木としても植えられる。
昼間開いていた葉が夜になると閉じて垂れ下がり、眠っているような姿になるところからこの名がつけられたという。
ネムの花は夏の夕方に開くところから詩歌の題材ともされた。
このネムの木の葉や枝にはタンニン、クエルシトリンなどが含まれ、漢方では「合歓皮」といっている。
内服すれば鎮痛、駆虫にも利用されてきたが、薬湯としては神経痛、リュウマチ、疝気の症状に利用される。
一回あたりネムノキの皮二キロそのまま風呂に入れて入浴する。
葉のついた枝先三本分位を二十センチ位に切り使うとより効果的。
ハ行薬湯
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「パセリ湯」
パセリはヨーロッパ南東部原産のセリ科の多年草で、古代ギリシャの時代から香味料として利用されてきた野菜である。
和名はオランダゼリとよばれたが、今ではパセリが一般的呼称となっている。
パセリの葉や茎をちぎると強い芳香を放つが、これは精油成分のせいである。
ほかにもビタミンA、Cなどが豊富に含まれている。
パセリの効果は消臭作用でワキガに悩むひとにはうってつけといえる。
またリュウマチ、神経痛、うちみ、ねんざ、外傷 のほかストレス解消や安眠にも効果がある。
一回分として、市販されているパセリ二束を適当な大きさに刻んで袋につめ、これを浴槽にいれ水からわかして入浴する。
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「薄荷(はっか)湯」
薄荷は草丈二十~五十センチになるシソ科ハッカ属の多年草で全国に分布する。
このハッカの種類は多く、ミドリハッカ、イネハッカ、チリメンハッカなどをはじめとして、変種まで含めると六百種近くあるといわれている。
ハーブでいうミントはすべてこの仲間に属する。
ハッカ類は葉、茎をちぎると、特有のさわやかな香りを放つが、これは芳香性精油成分のメントールのせいである。
その他イソメントン、メントン、ピネン、リモネンなどの精油成分もあるため、鎮痛、解熱、発汗、清涼などの働きがある。
それで、ハッカの薬湯に入浴すると、せき、のどの痛み、炎症、冷え性、精神安静、疲労回復の効果もある。
八~九月頃、花をつけた地上部全草を摘んで天日で乾燥させ、細断し保存し用いる。
一~二つかみを袋につめて熱湯をかけその汁と袋を湯船へ入れると良い。
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「ハトムギ湯」
ハトムギは草丈一~一.五メートルになる熱帯アジア原産のイネ科の一年草で、薬用として各地に栽培されている。
漢方ではハトムギの果実を精白したものをヨクイニンと呼び、消炎、強壮、鎮痛、利尿薬として用い、イボ取りた美肌作りに利用する。
ハトムギの果実には、脂肪酸エステルのコイクセノリドが含まれ、この物質には抗腫瘍作用があることが明らかになっている。
ハトムギを入れた薬湯で入浴すれば、イボ、シミ、ソバカス、肌荒れを防ぎ、肌を美しく保つ効果がある。
ヨクイニンを一回分として二~三掴みを袋に詰め、鍋にいれてから水から沸かし、十五分ほど煮出し、この煮汁と袋を風呂に入れて入浴する。
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「はまごう湯」
はまごうは三十~六十センチになる落葉小低木で本州、四国 九州に自生する。
北海道を除く砂地の海岸に群生している。
夏、紫色の小花が密集して咲く。
秋に実がなり漢方では果実を蔓荊子(まんけいし)、葉を蔓荊葉といっている。
カンフェンなどの精油成分のほか、脂肪油、フラボノイドが含まれており、解熱、消炎、鎮痛に良く、森林浴として利用されることが多い。
この薬湯で入浴すると頭痛、関節痛、打身や手足のしびれやひきつり、風邪にも効果がある。
一回量三十グラム程度を布袋に入れて鍋に入れ水六百ミリ位で十分ほど沸きたてる。
煎じ汁と袋を同時に湯船へ入れる。
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「ハマナス湯」
ハマナスは樹高一~一.五メートルになるバラ科の落葉低木で本州の海辺に群生し、公園、庭、ハーブ・ガーデンに植栽される。
花にはゲラニオール、シトラール、リナロールなどの精油成分が含まれているのでローズ油を抽出し、香水として利用するが薬用としても、下痢や生理不順に効果がある。
疲労回復、ストレス解消、安眠、美容に利用される。五月から六月にかけて蕾、花を摘んで陰干しし乾燥させる。
一度に一~二掴みを布袋につめ、袋ごと沸かしたお湯に入れる。
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「浜防風(はまぼうふう)湯」
海岸の砂地に自生する小型の多年草で、黄色の根が地中深くまで伸びている。
根を乾燥したものを浜防風と呼んでいる。
防風とは風を防ぐという意味である。
根は海岸で採集すればいい。
根はカビやすいので、風通しのよい
ところで十分陰干ししたあとで、天日乾燥する。
この根を一掴み三十グラムほど集め布袋につめ鍋で煎じる。
十分ほど沸かしたところで、煮汁と布袋を同時に浴槽へ入れる。
浜防風の薬湯に入ると湯ざめしない。
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「薔薇(ばら)湯」
バラ科バラ属の植物をさす総称で、各地の自生種から栽培種まで合わせると相当な数になる。
日本の野ばらを代表するのはノイバラで、漢方ではこの果実を営実(えいじつ)と呼んでいる。
できもの、はれもの、下痢、利尿に用いる。
また、花のツボミにはビタミンC、タンニン、クエン酸などが含まれていて収斂作用や冷却作用があるので、 化粧水としても利用されている。
バラの蕾を用いた薬湯は、皮膚の炎症を抑えるとともに皮膚細胞の賦活を助け、若々しい肌を保つ作用があるといわれる。
バラ湯を作るには、四~五月に花の蕾を集め、陰干しして乾燥させる。
一回分として一掴みを布袋に入れ、ぬるめの湯に十五分ほど浸し、そのひたした汁と袋を風呂に入れよくかき混ぜて入浴する。
もしくは、一回分として一掴みを袋に入れ、浴槽に入れて水から沸かすとよい。
バラの香りに包まれてクレオパトラの気分を味わおう。
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「檜(ひのき)湯」
ヒノキは高さ四十メートルになるヒノキ科の常緑針葉高木で福島県以西の本州、四国、九州に分布するほか、各地で広く植林が行われている。
外見上は同じ仲間のサワラなどとよく似ているがヒノキの葉の裏にはY字型の気孔線がある。
サワラやコウヤマキとともに風呂材として使われ、その風呂に入るとさわやかな木の香りが漂い、薬湯に入るのと同じ効果が得られる。
ヒノキにはヒノキチオールなどの精油成分が含まれておりこの風呂に入浴すると、精神安静、保温などの作用によってストレス解消、不眠、ノイローゼ、疲労回復に効果があるほか神経痛やリュウマチにも効果がある。
ヒノキ湯を作るには一回分として二十センチの長さの枝先を五~六本とり細断して鍋に入れ水から火にかけてこの煮汁を漉しとって風呂に入れる。
同じヒノキ科のサワラ、コノテガシワ、アスナロ、クロベなども利用できる。
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「枇杷(びわ)湯」
ビワは高さ五~十メートルになる中国原産バラ科の常緑高木で、日本には千年以上前に渡来し果樹として栽培されるほか、庭にも植えられている。
ビワの葉にはビタミンB17など細胞の活性化や消炎の働きがある成分が含まれており、この薬湯に 入浴すると、あせも、湿疹、かぶれ、肌荒れ、あかぎれ、にきび、しもやけなどの皮膚疾患や打身、捻挫にも効果があり、肌を
美しくする作用があるため美肌作りに効果的である。
枇杷葉刻みを一掴みして袋詰めし、水から沸かし、煮汁とともに風呂に入れる。
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「フスマ湯」
米を精米するときにでる残りかすをヌカと呼ぶのに対し小麦粉をとるときに出るカスはフスマといっている。
このフスマにはビタミンB群、E、Fe、カリウム、蛋白、脂肪が含まれていて、皮膚細胞の活性化や皮膚表面の保護に効果がある。
とともに毛穴などのたまった小さな汚れを分解し皮膚をきれいにし、乾燥を防ぎしっとりしたうるおいのある肌を作る。
ふすま湯を作るにはフスマ三百グラムを用意し、これを布袋につめ、これを風呂に入れてよくもみながら入浴する。
体温より二~三度高いぬるめのお湯が効果的である。
マ行薬湯
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「マタタビの薬湯」
「猫にマタタビ」で知られ、ネコが好んで食べ酩酊状態になる。
果実はなめらかで長楕円形、先は尖っているが虫が入ると異常に増大し虫こぶができる。
このマタタビの蔓は湯剤にすると体が温まる。
マタタビの蔓を10~1月頃採取し、陰干しで乾燥させる。
乾燥したら一掴みを鍋に入れ水を加えて煎じる。
十分ほど煎じたら煎じ液とマタタビを湯船に入れる。
この風呂に入ると体が芯から温まる。
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「松葉(まつば)の薬湯」
マツ科の常緑針葉高木、アカマツの葉を用いる。
樹高は三十メートルを越える。北海道から全国各地にみられる。
生薬として松葉は販売されている。
薬湯として利用すれば精神安定やストレス解消、保温による神経痛や腰痛などに効果がある。
一回に二百グラム位を布袋に入れ水から浴槽に入れておくと良い。
葉を採取した場合はよく水洗いし約二百グラムほどを鍋に入れ十分ほど煎じるその煮汁を浴槽へ入れる。
葉だけを利用し他のものを入れないほうがいい。
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「まつぶさ湯」
まつぶさは、長さ二~七メートルになるモクレン科の落葉つる性大本で、全国の産地に自生し、葉や枝をちぎるとマツに似た香りを発することと秋にブドウ状の実をつけることから別名をマツブドウとも呼ばれ、ウシブドウ、ワタフジと呼ぶ地方もある。
マツブサの茎には精油成分のβーピネン、ボルネオール、セスキテルペンなどが含まれ、血行促進、保温などの作用が優れるため、この薬湯に入浴すると神経痛、リュウマチ、腰痛などのほか冷え症にも効果がある。
石川県輪島ではワタフジと呼んで風邪の妙薬として朝市でも売っている。
秋になるとつる茎を根を残して切り取り、一~二センチの長さに細断し、天日で乾燥し保存する。
一回分として一.五~二つかみを鍋に入れ、水から火にかけて二十分ほど煮出し、この煮汁を漉してから、よくかき混ぜて入浴する。
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「みかん湯」
ミカンにはキシュウミカンとウンシュウミカンがあるが、種子がないこと、皮がむきやすいこと、寒さに強いこと、食べやすさや栽培上の理由からほとんどがウンシュウミカンで占められている。
ミカンの皮を天日で乾かしたものは漢方では陳皮(ちんぴ)と呼びこれを浴用剤として使うと体の芯からあたたまり、風邪の諸症状、神経痛、リュウマチ、腰痛、冷えに効果がある。
一回分の分量として二十個分のミカンの皮を用意する。
これをガーゼか木綿の袋に入れ、袋ごと浴槽にひたして入浴する。
また乾燥、保存した皮を用いるときは十五個分を器に入れ、これにお湯をかけて十五分ほどむらし、汁はそのまま、皮はガーゼにくるんでいずれも浴槽に入れる。
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「みずめ湯」
みずめは高さ二十~二十五メートルになるカバノキ科の落葉高木で、岩手県以西の本州と四国、九州に分布しアズサ(梓)ともよばれる。
古くは弓の材料とされたり版木として利用された。
また樹皮をきずつけると、水のような樹液を分泌するのが名前の由来で、この樹液にはサロメチールに似た匂いがする。新陳代謝や精神促進をする働きがある。
したがってみずめを用いた薬湯で入浴すると、神経を落ち着かせストレス解消、安眠、疲労回復にいい。
花をつけた小枝を適当な大きさに刻んで天日に干して乾燥させる。
一回分の分量として一.五~二つかみを袋につめ、上から湯をかけて二十分ほどむらし、その汁と袋を風呂に入れ良くかき混ぜてから入浴する。
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「茗荷(みょうが)湯」
茗荷(ミョウガ)は熱帯アジア原産のショウガ科の多年草で日本には古い時代に渡来し、薬菜として広く栽培されているほか野生化もしている。
その若芽には特有のさわやかな芳香がある。この若芽と花穂は汁や酢の物、薬味として食用にするほか根茎にはアルファーピネンをはじめとする精油成分が含まれている。
しもやけや凍傷のかゆみ止め、リュウマチ、神経痛に用いる。
ミョウガの薬湯には血行促進のほか、精神安静の働きもあるので、ストレスの解消、疲労回復、安眠にも有効である。
秋に先端部の葉と茎を採り、天日で乾燥して細断しておく。
一回分として二~三つかみを布袋に入れ、湯をかけて十五分分ほどむらし、その汁と袋を風呂にいれる。
若芽を十個程度を刻んで袋に入れ、直接、風呂に入れても良い。
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「明礬(みょうばん)湯」
明礬とは硫酸アルミニウムとアルカリ金属、アンモニュウム、タリウムなどの硫酸塩との複塩の総称であるが、通常明礬というときには硫酸アルミニュウムの水溶液に流酸カリウムを加えて結合させたアルミニュウムカリ明礬のことをさす。
色を良くするために漬物に入れたり、草木染に使うのはこれを熱して粉末状にした焼明礬である。
この明礬には収斂作用があることから、これを加えたお湯に入浴するとじんましんによる皮膚のかゆみや、圧迫性、接触性の皮膚炎によるかゆみがおさまるほか、あせもにも効果がある。
この明礬湯は体温の発散を促進するから、浴後の清涼感が得られ、汗かきには清涼感がえられると好評である。
一回分として一つの明礬を風呂に入れ、よくかき混ぜて入浴するが、体温より二~三度高めの風呂がいい。
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「木炭湯」
木炭には防湿、脱臭、水質浄化、防虫、空気浄化などさまざまな効果があり、生活全般にわたって効果が見直されている。
木炭を風呂に入れると先ず炭のアルカリイオンが作用して、ある種の温泉と同等の入浴気分が味わえ、それだけで疲労回復やストレス解消に効果がある。
肌に心地よい刺激を与え、美肌作りに最適であるばかりでなく身体を温めるので風邪や疲労回復にも効果的。
さらに炭を風呂に入れておくと湯垢を分解するだけでなく、匂いも吸着するため湯を取替えなくても四~五日使える。
一キロ分の木炭を布袋につめ、浴槽に入れておくだけでいい。
備長炭ならなおいい。
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「樅(もみ)湯」
樅の木は幹の直径が二メートル、高さ四十メートルになる常緑針葉高木のあの樅の木である。
モミには芳香性の精油のほか、樹脂、ビタミンA,Cが含まれ血行を促進する作用があるため、これを入れた薬湯は、身体を温め、風邪気味の入浴にはぴったりで、とくに咳や気管支炎には効果がある。
一回分の使用量として枝先二十センチ位のもの二本を、適当な大きさに刻んで、鍋に入水から二十分ほど煮出す。
この煮汁をふきんで漉して、湯船にいれよくかき混ぜて入浴する。
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「桃の葉湯」
桃は、高さ三メートルほどになる中国大陸原産のバラ科の落葉小高木で、日本には有史以前に渡来し、弥生時代にはすでに食用にされていた。
漢方では種子を桃仁(とうにん)、花を白桃花(はくとうか)といっている。
民間では土用の丑の日に桃の葉を用いて薬湯をたて入浴する習慣があった。
桃の葉にはフラボノイド、タンニン、ニトリル配糖体などが含まれ湿疹、あせも、ただれ、おでき、かぶれ、虫さされなどの皮膚の炎症に良い。
打身、ねんざ、痔にも効果がある。
ももの葉の生薬を二握りほど木綿袋に入れ、水から風呂に 入れて沸かす。
ヤ行薬湯
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「柳(やなぎ)湯」
ヤナギはヤナギ科の樹木でシダレヤナギを利用する。
シダレヤナギは樹高十~二十メートルになる中国原産の落葉高木で、日本には奈良時代に移入され街路樹、公園など にはよく植栽されている。
漢方ではこのシダレヤナギの枝を柳枝、葉を柳葉、樹皮を 柳白皮と呼び、消炎、鎮痛、解毒に用いる。
この薬湯で入浴すると痛風、リュウマチ、神経痛などの痛みを和らげ たり風邪の軽減の効果がある。
葉のついた枝を天日乾燥して、細断し、一回三つかみ分を 鍋で煮出し、この煮汁を漉しとって、風呂に入れよくかき混 ぜて入浴する。
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「ヤロウ湯」
ヤロウは三十~百センチの草丈になる地中海沿岸地方の原産のキク科の多年草で、和名ではセイヨウノコギリソウである。
ヤロウにはアズレン、αーピネン、リモネン、ボルネオールなどが含まれていて、収斂、抗菌、止血、消炎、鎮痛などにすぐれた効き目がある。
この薬湯に入浴すると擦り傷、切り傷、カミソリ負けなど皮膚や粘膜の炎症をはじめ神経痛、腰痛
などに効果がある。
花期に花のついた地上部全草をとり、陰干しで乾燥して細断したものを使う。
一回分二つかみを布袋につめ、湯にひたして十五~二十分蒸らし、その液と袋を風呂に入れ、よくかき混ぜてから入浴する。
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「柚子(ゆず)湯」
柚子(ゆず)はミカン科の常緑小高木で三~五メートルになる。
木の生育は遅い。
「桃栗三年、柿八年、枇杷は九年で成りかねる、梅は酸い酸い十三年、柚子の大馬鹿十八年」といわれるように、柚子は取るまでに何年も辛抱が必要である。
しかし、柑橘類のなかでは耐寒性が強いので、青森県以南ではどの地方でも栽培されている。
しかも、スーパーの野菜売り場で簡単に手にいれることができる。
発汗、解熱、疲労回復に浴剤として利用されてきた。
冬至の日にユズをたてて入浴する行事もある。
果実にはクエン酸、酒石酸、果皮にはヘスペリジンや精油のピネン、シトラール、リモーネンなどを含んでいる。
ゆず湯に入れば咳、喉の痛みや寒け、頭痛などの風邪の症状はもちろん神経痛やリュウマチ、冷え性、疲労回復にも効果がある。
一回分の使用量としてユズ玉五~六個を用意し、半割りや輪きりにして湯に浮かべる。
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「蓬湯(よもぎとう)」
よもぎは草丈五十~百二十センチのキク科ヨモギ属の多年草で、本州、四国、九州に分布する。
エゾヨモギ、ヤマヨモギシロヨモギなどの種類がある。
若葉は餅につきこんで草もちにしたり、葉の裏の綿毛を集めて灸のモグサを作る。
シネオールなどの精油成分と、数種類のセスキテルピンを含む。
薬湯にすると、腰痛、頭痛、リュウマチ、神経痛、肩こりのほか傷のほか、ニキビ、あせも、湿疹などに効果がある。
ラ行薬湯
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「ラベンダー湯」
ラベンダーは五十~百センチの高さになる地中海沿岸地方原産のシソ科の常緑小低木で、世界各地で栽培されており、日本でも北海道を中心に各地で栽培されている。
イングリッシュ種、フレンチ種、フレンジド種、ラナータ種など二十を超える品種があるが、特にイングリッシュ種とフレンチ種が優れているといわれる。
ラベンダーの主成分は酢酸リナロール、フルフロール、ピネンなどで、この薬湯に入浴するとリュウマチ、神経痛、筋肉痛、生理通、うちみ、外傷、湿疹、ニキビなど
の皮膚病などのほか、 気管支炎、不眠症、ストレス解消にも有効だ。
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「レディスマントル湯」
レディスマントルは草丈二十~三十センチになるバラ科の多年草で日本名はハゴロモグサと呼ばれる。
主としてユーラシア大陸や北米大陸に分布するが、日本でも一部の地域で自生する。
主成分はタンニンだが、今までは女性専用のハーブとして利用されてきた。
この薬湯は止血、消炎、殺菌などの作用が優れているので生理不順、更年期障害、婦人病に効果があるといわれる。
かぶれ、湿疹などの皮膚病にも効果があるといわれる。
一回分として二つかみを袋に入れ、湯にひたして十五分ほど蒸らし、この汁を袋を風呂に入れて良くかき混ぜてから入浴する。
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「レモングラス湯」
レモングラスはハーブで、高さ数十センチになる。
クエン酸のほかジペンテン、ゲラニオールなどの精油成分を含み殺菌作用、血管の強化作用、血行促進作用がある。
レモンに似たさわやかな香りが、ストレス解消や疲労回復に役立つ 。
一回分の使用量として、二株を根きわから切り取り適当な大きさに細断して、鍋に入れ水から火にかけて十五~二十分煮出しその煮汁を浴槽に入れて入浴する。
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「ローズマリー湯」
地中海沿岸地方原産のシソ科の多年生常緑 小低木で、和名ではマンネンロウと呼んでいる。
江戸時代に移入され、ハーブ愛好家の間で広まっている。
主として葉と花を料理の彩りや香りずけに利用するほか、化粧水や洗髪剤に利用する。
ボルネオール、カンフェン、ピネン、シネオールなどの精油成分を含み、この薬湯に入浴すると、血行が促進されて温熱効果が高まり、リュウマチ、神経痛、関節痛、筋肉痛
のほか、風邪の諸症状、ぜんそく、神経衰弱に効果がある