がん,ガン,癌研究対象の生薬

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がん、ガン、癌への研究対象の漢方薬、生薬

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合成薬品の制癌剤は、ガン細胞を殺すことを目的に細胞毒性のあるものだけを追い続けてきた。ある種のガンでは最近では無理して殺さず、生体に免疫力を持たせて、ガン細胞の成長を抑え込み、平和共存をはかったほうがいいのではないかという考えも生まれてきた。投与した薬用植物のなかに制ガン効果があるかないかという実験報告がある。有効性がはっきりと現れたものの一つに漢方生薬の半夏(はんげ)がある。半夏を投与したマウスは、投与しなかったものに比べて、ガン細胞の成長が三分の一弱に抑えられたというのだ。半夏というのはいろいろな漢方処方のなかではなくてはならない重要な生薬で、サトイモ科のカラスビシャクの根茎である。植物の形はサトイモに似ているが、はるかに小さく草丈は7~8cm程度、引き抜くと大豆より少し大きいくらいの形の根茎がついている。その皮を取り除き、白く乾しあげたものが半夏で、そのまま食べると舌がしびれるような強いえぐ味がある。成分としては、デンプン、蛋白質、ホモゲンチジン酸および多糖体などが知られている。水で煮出した液に制ガン効果があったというのだ。それは高分子化合物である多糖体やポリペプタイドの存在を想像させる。サルノコシカケ科の菌体から作られている制がん剤PS-Kは、多糖体に10%くらいのポリペプタイドがくっついたものであるがこれは既に発売されている。しかも半夏は以前から漢方処方に使われ副作用のないことは既に実証ずみである。
キノコが持つ独特の成分である、高分子多糖体β-グルカンには私達の免疫力を高める成分がふくまれている。このキノコでも「子実体」と「菌糸体」に分けられる。傘と太い柄のような部分つまり、目に見える部分は子実体である。しかし、キノコの栄養分は、子実体の根元から土壌の中、或いは樹木など植物中に伸びている白い糸状の菌糸体のほうに多く含まれているのだ。目に見えない菌糸体は、土中や植物中で 四方八方に伸びている。子実体はキノコ料理などの食材。菌糸体こそ健康食品として利用される部分である。
キノコの話をしてきたが、厳密にいえばキノコは微生物なのである。抗生物質なども微生物から作り出すのだから、微生物は強力なパワーをもっているということがいえると思う。人体の七十パーセントまでが水分でできているが、微生物も七十パーセントまでが水分で、酵素などの量も人間と同じなのである。酵素は生体が活動する上で必要不可欠な高分子物質である。私達の体内にある酵素はデンプンをブドウ糖に変え、最後は二酸化炭素と水に分解する。蛋白質はアミノ酸に、脂肪は脂肪酸とグリセリンに分解するのも酵素の働きである。たとえば、シイタケの菌糸体液には約五十種類の酵素が含まれているが、酵素は生物の代謝に深くかかわっている。例えば蛋白質は 消化管にはいると、一旦はアミノ酸に分解されてから吸収される。しかし、この工程は必ずしもスムーズにいかず、人によっては分解されないまま吸収されたりする。分解酵素の機能不全である。こうなるとやっかいな症状がでてくる。 蛋白尿、血液減少などがおこる。こうなると、だるい、根気がないといつたような慢性疲労になるわけである。キノコにはこうした分解不全を解決する成分がふくまれているのことがわかっている。
ガン治療は手術、放射線、化学療法などによる治療のほかに漢方薬や免疫療法剤による方法を加えて総合的に対処することが大切なのではないだろうか。 まず、手術、放射線治療によりガンを取り除き、取り残しのガン細胞を殺すために抗ガン剤と漢方薬を併用する。そしてなるべく早く漢方薬だけにする。漢方薬は現在の免疫療法剤以上に免疫力を高め、ガンを抑える効果が期待できるうえに、抗ガン剤や放射線の副作用を減らす効果がある。現実にはガン患者のかなり多くが強力な抗ガン剤の副作用でなくなっている。これに漢方薬を代替したり、同時 服用すれば、誰でも一年や二年は長生きできるはずである。 しかも、医療用、一般用とも市販で買い求められる。 代表的なものは「十全大補湯」「補中益気湯」「小柴胡湯」「人参養栄湯」などである。十全大補湯は食欲不振を改善するとか、放射線治療による白血球の減少にも効果があるとか、痛みが少なくなるとかという報告例がある。 どうせだめな場合は一日でも長生きしてもらうために、代替療法による療法も重大である。植物人間ではないのだから、頭ははっきりしているのだから、周りの人たちは最大限の努力を惜しむべきではないと思う。そうした家族の努力が患者に生きる意欲を起こさせるのである。患者の生きようとする意欲は、食欲を増し、免疫力を高め、思わぬ長生きを生んだりするのである。特に放射線治療には高麗人参を早くから飲んでおくのがいいと考える。
漢方薬・生薬・薬草を手に入れるには

1. クマザサ(隈笹)
笹は日本に昔から生えていたものです。中でもクマザサは関東以南に広く育ち、日本の特産です。冬には葉の縁が白くくまどるのが特徴である。実は熊笹の字は当て字で隈笹が正しい。山野でも、庭でも鮮やかな隈とりは美しくきわだっています。幹の高さは50~120cmと低く まっすぐに立ち、群がるように生える。葉は枝に3~7枚つき 、手にひら状に広がっている。葉には両面に毛がなく、若い葉鞘に肩毛がついている。葉の大きさは長さ10~25cm 幅3~6cm楕円形で広く乾いてもまかないのが特徴です。 おもに利用するのは葉、なかでも緑葉です。 中でもササの葉には、ものすごい繁殖力とたくましい生命力をだす何かがひそんでいるような気がする。九州大学では隈笹の葉から取り出したリグニンと言う物質に制ガン作用のあることがわかったのです。又、隈笹には多糖体も含まれやはり制ガン作用があることが認められています。隈笹には多糖体でパンフォリンという成分が抽出されこれにガンの増殖を抑える作用が報告されています。一方隈笹は胃病、糖尿病、高血圧、喘息、風邪など広く利用されていることでも知られている。 隈笹は酸性体質をアルカリ体質とし、血液中のカルシウムイオンをふやすといわれます。隈笹の葉にベニバナを入れて煎じた水薬を飲むと、さらに良いともいわれる。葉を採集して陰干ししたものが売られている。
2. カワラ茸
このキノコはサルノコシカケ科の仲間です。幅1~5センチ。 厚さ1~2ミリ。枯れ木の表面に、屋根の瓦をふいたように何重も重なりあって生えることからなずけられました。他のキノコと違ってサルノコシカケ類の生命力が非常に強いのは、樹齢数百年もの古木に寄生してその養分をとりつづけるからです。 カワラタケは、今から20数年前にそのエキスからクレスチンという制ガン物質が見つかったことで俄然注目をあつめました。それまでの既成の制ガン剤が効果があげられなかぅた厄介なガンに効力を 示したのです。 クレスチンは私たちの体内で働く免疫T細胞を強化する性質が あるので、ガン細胞をかなり抑え込むことができます。 食道ガン、乳がん、胃がん、悪性リンパ腫などの特によく 効く事がたしかめられています。 「成分」多糖体(抗腫瘍効果)、ステロイド類(制ガン作用) 食物繊維(発ガン物質の排泄) 「特徴」カワラタケの免疫効果は決して強力ではありませんが、副作用がなく、安定性があるので自然な療法といえます。
3. 舞茸
マツタケ、シイタケと並んで古くから日本人に愛されてきた食用キノコといえば、舞茸です。全国各地で産出され、クリやミズナラ、カシの切り株によく発生します。 名前の由来は、平安時代の説話集「今昔物語」に、「このキノコを食べたものが嬉しくなり踊り舞った」と記されていることから、といわれています。 かさの表面は灰白色または暗褐色、その小気味のよい歯ごたえとコクのある味が特徴です。 アメリカの医学界では「マイタケの抗腫瘍機能は同時に免疫システム強化機能も持ち合わせている」という日本の研究結果を聞いて、大いに触発され、研究に乗り出しました。その結果米本土では「マジック・マッシュルーム」とよばれ注目されています。成分としてはβ-グルカン、ビタミンB1、B2、ビタミンD ナイアシン、食物繊維、亜鉛、銅。効能としては抗腫瘍作用、抗ガン作用、血圧降下作用、肥満抑制効果、便通作用、生活習慣病など。健康効果としては腸内の発ガン物質を除去する。血糖値を下げる 。血圧を調製し正常に保つ、体内脂肪の代謝を促進する。副作用の軽減としてはマイタケのもつβ-グルカンは、95% が糖で5%が蛋白で成り立っていますが、ガン治療の場合の化学療法剤による副作用を軽減することが、日本薬学会の研究によって明らかになっています。これは他のキノコのβ-グルカンを上回る大きな効用だといわれています。
4. 「アガリクス」
元はブラジルのサンパウロ郊外の山地にだけ自生していて、 原住民が食用にしていました。1965年に現地の日系人が 日本に持ち帰り、人工栽培されて有名になりました。 ガンの治療にめざましい効果があり、国立ガンセンターで行われた マウス実験では、実に90%の延命率を記録しました。 アメリカのレーガン大統領も在職中に喉頭がんを患い、手術を したあと長期にわたってアガリクスを摂りつづけました。 その結果、再発や転移は全く無く「さすが神のキノコ」と 感嘆したそうです。 主要成分のβ-グルカンは特殊な分子構造をもつ多糖類で、人体 の免疫力を調整する働きがあります。 これによって免疫力低下が発症の引き金になるガン、逆に免疫力 過剰で生じるアレルギー性疾患の両方に効力を発揮します。 また、免疫力調整という特殊な作用により殆んどの疾病に有効 であることもβ-グルカンの大きな特徴です。 免疫とアレルギーはいわば「両刃の剣」でアガリクスに含まれる β-グルカンは、免疫力低下にたいしてはこれを上昇させ、過剰 の場合はそれを低下させる働きがあるのです。 したがって、アガリクスを摂ればガンの治療とアレルギー症の 抑制という両方が期待できます。
5. 「阿魏茸(あぎたけ)」
あぎはセリ科の多年生植物で、葉は大きく、形はニンジンに似て 草丈一メートル半ほど。晩春から初夏にかけて、茎の上部から下へ斜めにさくと乳状の樹脂がにじみでます。 この樹脂には精油が含まれていて、駆虫作用があるので、昔から虫おろし、咳止めの薬に用いられてきました。 アギタケは、薬用植物であるこの阿魏の根茎上部で栽培した菌を利用した新種のキノコです。 1997年の三月に阿魏の原産地である中国の食用菌協会から優良品として認定され、キノコの新たな保健食品として現在脚光をあびています。 この新種のキノコには、アガリクスに多く含まれている β-グルカンが100グラム中24.5グラムと、より豊富に含まれていることが最近の成分分析によって明らかになっています。「適応」 ガンを含む抗腫瘍効果のほか、膵臓機能の活性効果があるので、インシュリンの生成促進が大いに期待でき、それによって血糖値を下げることができ、糖尿病の人にはすこぶる有効といわれています。糖尿病は肥満とは無関係に体質で起こることもあり、やせ型の人でもインシュリン欠乏症になることがあるので注意が肝腎です。 またストレスや偏食などで抵抗力が落ちて体調不良状態にある人に、低下した免疫力を取り戻す効果も備わっています
6. 白樺茸(チャーガ)
カバノアナタケとも呼ばれれます。ノーベル賞を受けた ロシアの作家ソルジェニツインの小説「ガン病棟」にも「 チャーガ」として知られています。白樺に寄生するキノコで腫瘍の成長を抑え、ガンも予防するといわれています。 たしかにこのキノコには消化器系の抗ガン作用があり、昔から食道ガン、胃ガンの治療に用いられてきました。 また消化を促す働きがあり、特に小児の消化不良に有効といわれています。 多糖類、サポニンが主成分です。 菌核は10~20センチと大型で石灰状でかたく、内部は黄褐色で、子実体はいくぶん黒ずみ、樹皮の下に平べったく広がり、小さな穴が全面に並んでいます。
7. 梅寄生茸(ばいきせいたけ)
サルノコシカケ、あるいはコフキサルノコシカケともよばれ、春から秋にかけて広葉樹の幹の側面に生えます。 多年生で一年毎に大きくなり、なかには幅が五十センチくらい成長したものが発見されることもあります。 表面に白い粉をふいているのが名の由来です。 古くからガンに効くといわれ、民間薬として知られていましたが、含まれている成分には、確かに制ガン効果があることが大学病院などで確認され、特に食道ガンに有効であることが報告されています。 漢方では「梅寄生」と呼ばれています。 エルゴステロール、ユビキノン、ジヒドロエルゴステロールなどが含有されています。
8. 椎茸
誰でも知っている食用キノコの王様です。食べておいしく、体に 入れば栄養価値も豊富です。 シイタケはシイの木のほか、ナラ、クヌギ、クリなどの広葉樹の 枯れ木や切り株に生えますが人工栽培も盛んです。発生する時期 によって秋子、春子、夏子、冬子とよばれています。 シイタケが人間の免疫活性を活性化させることは1960年 ミシガン大学の教授によって発表されました。 血中コレステロール低下作用もあります。 シイタケに含まれるエルゴステリンは日光にあたると薬理効果 が一層たかまります。生より干しシタケがいいのです。 ビタミンDはカルシウムの吸収をよくしてくれます。 蛋白質、多糖類、ビタミンB群、食物繊維、亜鉛、マンガン、 カリウムなども含まれています。
9. タモギタケ
梅雨期から晩夏にかけて東北地方から北海道に限って自生するシメジ科のキノコです。落葉樹のヤチダモやニレの倒木などに発生し、鮮やかな黄色の傘が特徴になっています。 その色彩が派手なため、食用キノコには見えず、敬遠されがちなため、消費量は多くありません。 独特の甘い香りがあって、味も良いので、最近では北海道で人工栽培されています。 「成分」 β-グルカン、食物繊維、鉄分、カルシウムなどが豊富に含まれています。 とくにβ-グルカンは100グラム中20.3ミリグラムという 特質すべき量になっています。 「効能」 β-グルカンの免疫活性作用によって、ガン細胞の 増殖や発生を抑えることができます。 また、ウイルスなどの外敵が侵入してきても、大型の免疫細胞マクロファージが活発に働くことでそれを阻止できます。 食物繊維、鉄分が豊富なため、便通が改善され、増血作用も促進されます。それによって血液が浄化され、貧血症状も 軽快します。また、カルシウムの十分な補給は神経節のジョイントを強固にしますので、ストレス耐性も上がり、胃炎などを沈静化させる働きがあります。
10. 「半枝蓮」(はんしれん)
中国各地、台湾などに分布し、湿地に生えるシソ科の植物。 全草を用いる。コガネバナやタツナミソウと近縁植物です。 中国の江蘇省地域の民間薬である。 成分にはアルカロイド、フラボノイド配糖体が含まれる。 水性エキスは白血病細胞にたいする抑制作用が認められている。 民間薬として止血、止痛、清熱、解毒の効能があり、外傷や鼻血、吐血、下血、肝炎、咽喉腫痛、皮膚化膿症、肺化膿症などに用いる。乾燥したものを煎じて用いたり、新鮮な絞った汁を服用する。近年、食道ガンや肺癌に対する研究が進められている。
11. 「ハナビラタケ」
まるで花びらにおおわれたような美しいキノコである。 名前もそこからきている。白いボタン状で、夏から秋にかけてマツやモミの幹や切り株に生えるその姿は珊瑚のようである。 味も食用キノコとして一級品である。 シコシコした歯ざわりはマツタケに似た風味があるという。 成分としてβ-グルカンの含有量は100グラム中43グラムである。ほかにビタミンB2、ビタミンD、食物繊維、蛋白質、鉄分などが含まれている。
12. 「松茸」
香りマツタケ、味シメジといわれるように、あの歯ざわりと味は 格別で"キノコの王様"ともいわれています。 秋にアカマツの根元に生えますが、発生条件が厳しいために群生せず、キノコ狩りでは宝探しとまでいわれます。 人工栽培が難しいので貴重品です。 成分としては蛋白質、エルゴステロール、ビタミンB2、ビタミン C,ビタミンD2、食物繊維などです。 効能としては抗菌、抗腫瘍作用がありますが、他のキノコとくらべると有効性は低いといわれます。 胃腸の機能を高める作用や慢性尿道炎の症状を緩和する作用があります。
13. 紫シメジ
普通のシメジが白いユリのような外観なのに対し、これは全体が淡いラベンダーで美しいキノコです。 晩秋の頃雑木林で群生します。汁物にもよく、鶏肉との合わせ煮 がお奨めです。 β-グルカンが主成分なので、抗腫瘍・抗ウイルス効果があります。 また食物繊維が豊富なので、便秘を改善し、腸内の異常発酵を抑える効果もあります。食物繊維は同時に、糖分の吸収を抑える働きがありますから、肥満防止にも効果的です。
14. メシマコブ
漢薬名を「桑黄」(そうおう)といい、桑の木に生えるキノコです。漢方では古くから利尿剤として使われてきました。 このメシマコブに数あるキノコのなかでももっとも強力な抗 腫瘍活性があることがわかったのは30年ほど前のことです。 メシマコブの人工栽培は難しく、自生数も大変少なかったからです。1980年代にメシマコブの人工栽培が可能になり、現在ではその菌子体がつかわれています。 成分は多糖体、脂肪酸、アミノ酸、核酸、酵素など。 マクロファージなどの免疫細胞やガンに対抗するT細胞やNK細胞の数も増殖させる働きがあります。 化学療法剤との併用でメシマコブエキスを与えると、制癌剤による副作用を軽減させることが報告されています。 手術後の患者にメシマコブエキスを与えると、術後の経過がよくなるといわれています。
15. ヤマブシタケ
かさがなくて、まるでハリネズミのような外観がユニークな キノコです。秋にブナやミズナラの幹にはえますが、年々少なく なっており今では「幻のキノコ」といわれています。 成分 必須アミノ酸八種類がバランスよく配合され、食用キノコとして 理想的です。 脂肪酸も含有され、リノール酸が40%をしめますがこれは コレステロールの低下作用があるのです。 このヤマブシタケの細胞膜がβ-グルカンやキチン質から構成 され、食物繊維含有量は100グラムに対し、37グラムにも 達しています。従って、腸管内の発ガン物質を吸着、排泄する 働きが強く消化器ガンの予防に大変効果的な役割を果たして います。
16. 霊芝(れいし)
サルノコシカケ科のキノコで、夏から秋にかけて広葉樹の根元や切り株に生えます。 2000年前の中国の本草書「神農本草書」に既に記載され、 万病に効く特別のキノコと記されています。 人工栽培されています。 成分β-グルカン、アミノ酸、エルゴステロール、アルカロイド、ガノデラン、ボルバトキシン、ビタミン類、ゲルマニュウム、テルペノイド、ペプチドグリカン。 応用効果多糖体β-グルカンとテルペノイドの作用が免疫力を高め、 私達の体にインターフェロンを生み出すことにより、腫瘍やガンに対する制御効果をたかめてくれます。その解毒作用によって肝機能もたかまります。
17. 「藤瘤(ふじこぶ)」
本州、四国、九州の山地に自生する日本特産のマメ科の落葉低木、フジの樹皮にできている瘤を用いる。 中国の藤はシナフジのことであり、別の植物である。 わが国の民間療法ではフジの老木に生じる瘤を胃癌の治療に用いる。藤瘤からメタノール抽出した成分のイソフラボノイドに発ガン抑制作用があるという報告がある。藤瘤は訶子、菱実、ヨクイニンとともに服用すると抗がん作用があるというので、注目された。藤瘤は主に香川、愛媛などで採取されているが産出量は多くはない。樹皮にはウイスタリン、種子にはシチシンが含まれるが有毒である。
18. 菱実(りょうじつ)
菱の実(ひしのみ)です。我が国や東アジアに広く分布し、池や沼に自生するヒシ科の一年草、ヒシの果実を薬用にします。 中国ではトウヒシの果肉を菱(りょう)といっている。 ヒシの葉柄には空気袋があり、葉の部分は水上に浮遊します。 核果は硬く、ガクに由来する刺針をそなえています。 種子はゆでたり、焼いたりして食用にもされます。 昔は小川にもよく生えていたものです。 種子はデンプンを多く含むほか、タンニンのトラパインや植物 ステロイドなどの成分が知られています。 民間では滋養強壮、止痛、解毒などの目的に使われています。 生または茹でて食べると滋養強壮作用や健胃作用、解毒作用があり、二日酔いや胎毒にもいい。腰痛などの痛み止めで知られる伝統薬の腰専門にも配合されている。 胃ガンや子宮ガン、乳ガンなどに刺のままの果実をくだき、茶剤あるいは煎薬にして服用する。かって、菱実に藤瘤、訶子、ヨクイニンを配合した「WTTC」が胃癌などの手術不能の場合や術後の再発防止に効果があったといわれたことがある。
19. 夏枯草(かごそう)
シソ科のウツボグサの花穂もしくは全草、韓国産夏枯草の一部は、 ビャクダン科のカナビキソウの全草「土夏枯草」ともいわれます。 花穂が半分枯れたころに採取します。日当たりのよい路傍にみられ、 初夏に咲いた紫色の花が真夏に褐色に変化することから夏枯草といわれ、また花穂の形が「うつぼ」という矢を入れる道具ににているためウツボグサと名付けられました。 主に中国(江蘇、安徽、河南省など)、韓国、日本(長野、四国)で産出されます。 トリテルペノイド(ウルソール酸及びその配糖体ブルネリン、オレアノール酸、フラボノイドを含有する。)が主成分です。 薬理作用としては 弱い強心利尿作用(ウルソール酸、ブルメリン)があります。 降圧利尿、消炎薬として、水腫、小便不利、淋疾等に用います。 漢方では肝熱を清し、硬結を散じる効能があり、高血圧や結膜炎、めまい、頚部リンパ節腫大、甲状腺腫、乳腺炎、乳ガン、肺結核、帯下などに用います。日本では利尿薬として膀胱炎(淋疾)、腎炎に用いる。家庭薬の利尿剤としてしばしば配合されています。 代表的な作用としては 一.清熱作用 眼の充血や高血圧の諸症状に用います。眼の充血・疼痛、頭痛、めまいなどに石決明、菊花と配合する。夜になると眼がはげしく痛むものには当帰・玄参・芍薬などと配合します。(夏枯草散) 流涙をともなう眼痛には夏枯草と香附子の粉末を服用します。そのほか口内炎や扁桃炎にうがい薬として夏枯草の煎液を用います。 夏枯草には降圧作用もあるため、めまい、頭痛などの高血圧随伴症状や高血圧予防に単独あるいは決明子などと配合して用います。 二.抗腫瘤作用 頚部リンパ節腫瘤や甲状腺腫に用います。
20. 莪朮(がじゅつ)
マレーシア、インド、ヒマラヤを原産とするショウガ科の多年草 、がじゅつの根茎です。中国では広西、四川省を主産地とし、 日本では屋久島、種子島、沖縄などで栽培されています。 主成分としてはクルゼレノン、クルデイオン、ゼデロンのほか多糖類の副成分としてシネオール、ボルネオールからなる精油が 含まれ芳香性の健胃作用、胆汁分泌促進作用、抗菌作用が知られています。腹部の脹満感や疼痛、腹部腫瘤、消化不良による食積、おけつによる月経閉止、打撲症に用います。 莪朮はとくに腹部腫瘤に効果があるという。中国では最近、子宮癌などの癌治療に応用して臨床成果が発表されています。 日本では「弘法の石芋」と呼ばれたりしています。腹部の癌には小柴胡湯との合方で用います。頚部リンパ腺腫や甲状腺腫には海草・昆布などと配合して用います。近年中国では子宮頚癌をはじめ胃癌・肝癌などに単独あるいは三稜などと配合して用いられたりしています。 莪朮を主成分とする注射液もあるという。
21. 日日草(にちにちそう)
マダガスカル島原産で、熱帯地方に栽培されているキョウチクトウ科の多年草、ニチニチソウの全草を用いるのです。日本には江戸 時代に渡来し、観賞用に栽培されています。一日ごとに花が咲き変わ るのでその名があります。1958年葉から抽出されたアルカロイドに 抗白血病作用があることで注目されました。含有アルカロイドとして 細胞分裂を阻害し、抗腫瘍活性を有するビンブラスチンとビン クリスチンがあり、ビンプラスチンはホジキン病、悪性リンパ 腫、絨毛性腫瘍に、ビンクリスチンは小児の急性白血病、悪性 リンパ腫、小児腫瘍に応用されています。 副作用としては胃腸障害、脱毛、白血球減少があります。
22. 山豆根(さんずこん)
中国南部に分布するマメ科の低木、広豆根の根を用います。 中国北部の地方ではツヅラフジ科のコウモリカズラの根を山豆根または北豆根とよんでいます。広豆根の成分にはマトリン、アナギリンなどのアルカロイド、ソフォラジンなどのフラボノイドそのほかシトステロール、ルペオールなどが含まれています。 漢方では清熱解毒、利咽の効能があり、咽喉の腫痛、歯肉の歯痛 黄疸、痔疾、腫れ物などに用いられます。 咽喉や歯肉が腫れて痛むときに単独あるいは射干・牛蒡子などと 配合します。梅毒などによる咽喉の腫痛には桔梗・土茯苓などと配合します。 また口内炎や痔などに外用薬としても用いられます。 近年、肺癌、咽頭癌の初期治療に用いられています。
23. 別甲(べっこう)
スッポンの背および腹の甲羅を用いる。一般には背の甲羅が使用される。背甲を煎じ煮詰めたニカワを別甲膠という。 スッポンは淡水に生息し、背甲は淡い灰緑色の楕円形で亀甲がなくて中央が突起し、口は長く突き出ている。 クコシ、オウギ、トウキ、サンヤクなどとスープにしたものは薬膳として知られている。 スッポン料理は強精食として有名であり、滋養、強壮や発熱マラリアなどによる肝脾腫、腹部腫瘤、小児のひきつけなどにも用いる。 腫瘤や肝脾の腫大にはゴシュユ、ハンゲなどと用いる。 サイコ、ダイオウと配合した処方もあり、抗腫瘍作用について研究が進められている。
24. 天葵子(てんきし)
中部地方以西の日本各地、朝鮮半島、中国などに分布するキンポウゲ科の多年草です。天葵(ヒメウズ)の全草を天葵(てんき)といい、塊根を天葵子と言っています。 根が烏頭(ウズ)に似て小型なためにヒメウズといい、形がネズミの糞に似ているため千年老鼠屎(せんねんろうそし)という異名がついています。田畑のあぜや石垣の間に生える雑草で、四~五月頃に小さな花を下向きにつけます。 根にはアルカロイドやラクトンが含まれ、抗菌作用が知られています。漢方では清熱、解毒、利尿の効能があり、皮膚の化膿 や腫れ物、乳腺炎、蛇によるカマレキズや打撲傷、膀胱炎などに内服あるいは外用として用います。 外用としては新鮮な天葵子の根をすりつぶして用います。 近年中国では注射液による上気道炎の治療や乳がんや肝がん、 リンパ肉腫などの臨床研究が進められています。
25. 沢漆(たくしつ)
トウダイグサのことである。日本各地、アジア、ヨーロッパに 広く分布している。トウダイグサ科の越年草でトウダイグサの 全草を用います。 中国では開花期に採り、根を除いてもちいます。 この属種には有毒なものが多いのです。茎や根から出る白い 乳液が肌に触れると炎症や水泡などの皮膚炎や結膜炎が起こり 、誤って内服すると喉がはれて嘔吐や腹痛、下痢となり、さらに めまいや痙攣の症状が出たりする。 峻下薬の巴豆、甘遂、大戟、ヒマシなどはいずれもトウダイグサ科です。日本ではトウダイグサの根茎を和大戟と称し、大戟の代用にしたことがある。全草にはクエルセチンやトリヒマリンなどのフラボノイドが知られていますが、有毒成分は明らかではありません。 近年、リンパ節結核や食道癌などに対して研究が進められています。 我が国では乳汁がイボを取るというので使われたりします。
26. 山慈姑(さんじこ)
日本全国に分布するラン科の多年草、サイハイランなどの鱗茎を 用います。茎の一方向に花をつけるため采配(さいはい)とも呼ばれています。 この鱗茎は焼いたり、ゆでて食用にもされます。 またユリ科のアマナも山慈姑とよばれるが、これは光慈姑として区別して扱われます。山慈姑にはマンナンなどの粘液やデンプン が含まれています。漢方では清熱解毒・消臭の効能があるとして腫れ物、蛇や虫のカマレキズに用います。 頚部リンパ結核や耳下腺炎などにも効果があります。 「紫金錠」にも配合されています。中国では食道ガンや乳がんリンパ肉腫などへの研究がすすめられています。
27. 馬銭子(マチンシ)
インド、東南アジアからオーストラリア北部に分布するマチン科の常緑高木マチンの種子をさしています。 矢毒、吹き矢毒や薬用に利用されていました。 マレー半島、フィリピンあたりではイポー毒として大変おそれられていたようです。種子にはストリキニーネやブルシンなどが含まれています。 少量を用いると「ホミカ」と称しホミカエキス、ホミカチンキとして苦味健胃薬に利用されています。やはり薬と毒は紙一重ですね。 スロリキニーネは硝酸塩にして少量飲めば精力剤として利用されたりします。 この、馬銭子の種子が近年、食道ガン、胃ガン、皮膚ガンの治療薬として研究が進められています。
28. ヨクイニン
東南アジア原産のイネ科の一年草です。種子をハトムギと称しています。薬材には鞘を除いて軽く精製した白いものを用います。 江戸時代には我が国でも栽培されるようになりました。 ジュズダマは漢薬名は川穀(せんこく)といい別物です。 ジュズダマは表面が固い灰黒色のホウロウ質で、指でおしてもくだけません。東南アジアや中国ではハトムギはお粥にしたりご飯と混ぜて食べる地域もあるといわれます。 ハトムギの成分は澱粉五十二%、蛋白質一八%、脂肪七%で、カンペステロール、スチグマステロール、コイキセライドが含まれている。 コイキセライドは脂肪酸のエステルで、抗腫瘍作用が確認されています。漢方では水イボ、イボの治療薬として幅広く使われています。ニキビや美容にも肌をきれいにするというので各方面で使用されています。 漢方では浮腫、高血圧、母乳不足にも用いられます。
29. 巻柏(けんぱく)
日本各地および台湾、朝鮮半島、中国、インドなどに分布し、 岩壁などに生えている常緑シダ植物、イワヒバ科のイワヒバの全草を用います。岩に生えて、針葉樹のヒバの葉に似ているところからイワヒバの名があります。 イワヒバの茎は乾燥すると内側に巻き込み、湿度が上がるとともに 戻る特徴があります。全草にはビスフラボンやオリゴサッカロイドのトレハロースが含まれている。 漢方では活血、おけつを去る効能があります。無月経や腹部腫瘤打撲傷などに用います。 近縁植物のオニクラマゴケの全草は大葉菜と呼ばれ絨毛上皮癌や咽喉癌に対する研究が進められています。
30. 括楼根(かろこん)
天花粉のもとということでよく知られている。 中国産;ウリ科のシナカラスウリ(チョウセンカラスウリ9の外皮を去った根。中国では一般的には「天花粉」という。 河南産のものが品質最良なので「安陽花粉」の名がある。日本産;ウリ科のキカラスウリ、およびオオカラスウリの根の外皮を除き、横切りもしくは縦切りしたもの、現在は殆ど市場性がない。産地としては、中国(河南、広西、山東、江蘇、貴州、安徽など)、日本、韓国などである。 成分としては、多量の澱粉(約40%)のほか、有機酸としてトロコサント酸、各種アミノ酸などを含有する。 応用としては、止渇、解熱、鎮咳、利尿、排膿、催乳薬として、虚証の口渇、咽喉の腫通痛 、呼吸器疾患、悪性腫瘍などに応用する。 インターフェロン誘起作用が知られている。粉末(天花粉)は幼児の皮膚病 に外用する。根のデンプンは天花粉といい、かって乳児の汗疹の治療に用いられた。ちなみに最近のベビーパウダーはデンプンに亜鉛華などを加えたものが殆んどである。煎剤、散剤、丸剤として用いられる。1日2~5グラム。
31. 急性子(きゅうせいし)
インドから東南アジアが原産であるツリフネソウ科の一年草 であるホウセンカの種子を用いる。歌の題名にもなったこのホウセンカの全草は鳳仙あるいは透骨草として生薬に用いられる。熟した果実は少しでもふれると、果皮が裂開して種子が飛び散る。種子には脂肪酸のパリナリシンなどが含まれ 、子宮収縮作用がある。漢方では無月経、腹部の腫瘤や死胎の排出に用いる。民間では陣痛の誘発薬として利用されていた。 咽に骨が刺さった時に急性子を噛んで飲み込むとよい。 食道ガンの研究に利用されている。
32. 黄薬子(おうやくし)
本州の関東以西、朝鮮半島、中国、東南アジアなどに分布する ヤマノイモ科のつる性多年草です。ニガカシュウ(カシュウイモ)の塊根です。ニガカシュウはひげ根のついた偏球形の塊根である。 苦味が強いため灰汁でよく煮て水でさらし、十分にあくをぬく必要がある。苦味の少ない栽培品種にカシュウイモがある。 ジオスゲニン、ジオスブルビンなどのステロイドサポニンが含まれエキスの動物実験では心抑制作用、子宮興奮作用、抗菌・抗真菌作用が報告されている。 黄薬子酒には胃癌、食道ガンに対する抗腫瘍作用が報告されている。 漢方では清熱解毒、止血の効果があり、鼻血、吐血、喀血、などの出血や咽喉腫痛、皮膚化膿などに用いる。
33. 訶子(かし)
インド、ビルマの原産で、中国では雲南、広西、広東、チベットなどで植栽されているシクンシ科の落葉高木、ミロバランの果実を用いる。訶梨勒(カリロク)ともよばれている。 ミロバランの樹高は三十メートルばかりで、果実は三センチ位である。成分としてはタンニン、ケブリン酸、エラグ酸などが含まれている。タンニンには収斂作用、止瀉作用、鎮痙作用があり、煎液には強い抗菌作用がある。漢方では咳、下痢、脱肛、血便、性器出血、帯下、遺精、頻尿などに用いられる。 訶子、藤瘤、菱実、ヨクイニンを配合したものは抗ガン作用がある。
34. 三稜(さんりょう)
日本各地、東アジアにかけて分布し、池や沼などの浅い水中にはえるミクリ科の多年草、ミクリやエゾミクリ、ヒメミクリの塊茎を用いる。中国東北部や内蒙古などでは沼沢地にはえるカヤツリグサ科の多年草ウキヤガラの塊茎を用いる。 生薬名はミクリを荊三稜、ウキヤガラを黒三稜という。 一般には区別せずに用いている。 腹部の腫瘤や腹痛、胸痛、月経障害、打撲傷などに用いる。 主に、おけつ、気結、食滞などとどこって腫瘤になったものを除く。三稜と莪朮は併用すると活血・理気の作用は高まる。 越中富山の反魂丹にも配合されていることで、よく知られている。近年、子宮筋腫や腹腔内の腫瘤や産後や月経の異常に応用され、さらに肝癌に対する効果も期待される。
35、 劉寄奴(りゅうきど)
中国大陸南部に分布するキク科ヨモギ属の多年草、開花期の全草を用いる。劉寄奴の名は、南朝、宋の初代皇帝である劉裕が発見したという故事にちなむ。中国北部ではゴマノハグサ科のヒキヨモギの果実をつけた全草をさす。 漢方では活血、通経の効があり、おけつによる腹部腫瘤や腹痛の常用薬である。急性肝炎の効果はすでに発表済みである。 ガンに対する研究も進められている。
36. 牛蒡子(ごぼうし)
ヨーロッパからシベリア、中国東北部にかけて分布するキク科の多年草、ゴボウ(牛蒡)の種子を用いる。 ゴボウの種子には脂肪油、リグナン系久苦味配糖体のアルクチインが含まれ利尿作用や抗真菌作用が知られている。 漢方では散風熱、去痰、止咳、解毒の効能がある。 六ケ月の服用を目標にガン患者にのませると、抗ガン剤による治療を続けているひとが副作用が少なくなり、ガンの発生が少なくなっていつたというのです。 ガン患者の体内で作られる蛋白AFPの値が低くなり、免疫機能が強化されるというのです。 ガン細胞が検査でひっかからない段階でつぶされているのではという意見もあります。 漢方ではアトピーなどの解毒証体質の改善に効果がある。
37. 仙鶴草(せんかくそう)
日本全土及びアジアに分布しているバラ科の多年草である。 キンミズヒキの全草を用います。細長い穂に黄色い花が咲く様子が水引ににているので、キンミズヒキの名がある。 キンミズヒキは春先に柔らかい若葉と若芽を摘み、おひたしや和え物にして食べることができる。 キンミズヒキの根にはアフリモノリド、アグリモニインが含まれ、止血、抗菌、抗炎症作用がある。 漢方では止血、健胃、強壮作用がある。鼻出血、吐血、血便、血尿、性器出血など全身の出血や下痢、倦怠感、精力減退に応用する。癌治療の研究が進められている。
38. 石榴皮(せきりゅうひ)
アジア地方を原産とするザクロ科の落葉高木、ザクロの果皮を用いる。漢代には安石榴とも呼ばれたという。平安朝の頃はザクロの種子や果汁は有機酸を多く含むため、銅鏡を磨くのに用いられたという。果皮にはガラナチンなどタンニンが多く含まれている。漢方では駆虫・止瀉の効能があり、とくに細菌性、アメーバ性腸炎やの下痢や条虫などの寄生虫病に用いられる。また、止血、止痒作用があり、性器出血、脱肛に用いる。近年、癌に有効だというので、研究が進められている。
39. 瓜呂仁(カロニン)
日本産のキカラスウリの果実の種子のことです。 リノール酸、リノレイン酸、トリコサン酸などの脂肪酸が含まれている。漢方では潤肺、化痰、通便、排膿の効能があり、咳嗽、粘ちょう痰、咽喉痛、胸痛などに用いる。 民間では尿や母乳の出をよくするために、煎じて服用されています。この瓜呂仁が癌に効くというので、研究が進められています。
40. 川楝子(せんれんし)
中国の四川、湖北、湖南、河南などに分布するセンダン科の落葉高木、トウセンダンの果実を川楝子というのです。 センダンは日本だけでなく世界各地で公園樹や街路樹として利用されている。トウセンダンはその主産地の四川の名を冠して川楝といっている。市場では台湾センダンの果実を川楝子といつている。 成分はトウセンダニン、タンニン、リンゴ酸などが含まれている。 回虫に対する殺虫効果があり、漢方ではさまざまな腹痛、脇痛、重苦しい間欠的な痛み、陰嚢などの下腹部痛、寄生虫などの腹痛に用います。最近、この川楝子について抗ガン作用について研究が進められています。
41. 蘇方木
インドからマレー半島原産で中国南部や台湾でも栽培されるマメ科の常緑小高木、スホウのの心材を乾燥したものを用いる。 スオウというのは中国の蘇方の転じたもので、蘇方とか、蘇方木といわれる。心材にはブラジリンが含まれ、空気中で酸化されて紅色のブラジレインとなります。 古くから赤色染料として知られています。ちなみに南米に産する同属の植物をポルトガル人が誤って蘇方木と呼んだが、これがブラジルの国名の由来といわれている。木部にはブラジリンのほか、フェランドレンやオシメンなどを主成分とする精油が含まれています。 煎液には心臓の収縮力増強、中枢神経抑制、抗菌などの作用があることが知られています。 無月経、外傷や腹痛、産後のおけつなどに用いられています。 この植物の抗ガン作用があるということで、研究がすすめられています。
42. 淫羊かく(イカリソウ)
強精薬、催淫薬として古くから知れれています。メギ科の多年草で、我が国に広く分布するイカリソウ、本州中部以西に分布するトキワイカリソウの地上部全草を用います。 中国ではおもにホザキノイカリソウや心葉淫羊かくなどが用いられています。 和名のイカリソウという名は花の形が錨に似ているためで、代表的な強精薬です。雄の羊がこれを食べると一日百回交合するという言い伝えによります。 成分にはフラボノール配糖体のイカリイン、エピメジンなど二十余種、そのほかに、アルカロイドのマグノフロリンなどが 含まれます。エピメジンに性ホルモンの分泌を促し、神経を刺戟する作用があります。淫羊かくの煎じ液には催淫作用のほか、抗ウイルス・抗菌作用のほか、鎮咳、去痰作用が知られています。近年では、抗ガン作用について研究が進められています。
43. 旋覆花(せんぷくか)
日本各地、朝鮮半島、中国に分布するキク科の多年草、オグルマおよび同属植物の頭花の部分だけを用いる。またオグルマの全草は金沸草(きんふつそう)として薬用にされる。 野原や田畑の湿ったところに生え、夏から秋にかけて黄色い花がさく。花は中央の管状花の周りを整然と一列の舌状花が取り囲み、これを小さな車に見たたてオグルマという名がある。旋覆花という名も、周囲の舌状花が花序を覆うことを意味する。花の成分にはブリタニン、イヌリシン、クロロゲン酸などが含まれるが、詳細は不明である。漢方では去痰、止咳に用いる。 近年、ガンに対する作用の研究が進められている
44. 一位葉(いちいよう)
日本各地、朝鮮半島、中国に分布するイチイ科の常緑針葉高木、 イチイの葉です。中国ではイチイの葉や枝を紫杉という生薬名で呼んでいます。建築材や彫刻剤、鉛筆剤として知られ、飛騨高山の一位細工としてもよく知られています。 葉や材にはアルカロイドのタキシン、タキシニンなどが含まれ 血糖降下作用や中枢神経抑制作用が報告されています。 ジテルペン系の化合物であるタキソールは卵巣ガンに有効ということで、広く臨床で使われています。 最近のヒットの一つでしょう。 天然物から発見された画期的な新薬です。
45. エキナセア
アメリカ中西部から南部に生育するキク科植物、の根あるいは 開花時の地上部を用います。 アメリカ西部の大平原にすむ原住民がどの植物よりもよく、風邪、炎症、創傷などの薬として使用しています。 アメリカでは医薬品としても扱われていたのですが、抗生物質 の出現で余り使用されなくなりましたが、現在、再び注目を集めています。 免疫を増強する作用があるということで、インフルエンザ、風邪などにも用いられます。 また、感染症の予防と治療、抗酸化作用、抗ガン作用もあるといわれ、副鼻腔炎、膀胱炎などにも用いられます。
46. キャッツクロウ
ペルー原産のアカネ科のつる性の植物です。 日本産のカギカズラと同属で、葉の付け根に名前の由来を示す花柄の変化したネコのツメのような釣針型の突起があります。 ペルーでは古くから抗腫瘍、抗炎症、リュウマチその他の病気に用いられてきました。 最近免疫力を高める作用が注目され、強精、強壮効果も認められています。
47. 牛皮消根(ごひしょうこん)
イケマ商陸として広く知られています。 日本各地、南千島などに分布するガガイモ科のつる性多年草イケマの根を用います。 イケマとはアイヌ語で大きな根を意味しアイヌの霊草です。 有毒植物ですが、アイヌは若苗や根を水にさらし、煮て食用にしていたほか、薬用として食中毒や腹痛、感冒、切り傷の治療に使っていた。 イケマの根には強心配糖体やその他の配糖体が含まれ、強心利尿作用がある。茎を切ると白い樹液がでてきますが、この なかにはシナンコトキシンという有毒物質が含まれていますが、この中に、プレグナン配糖体の含有が明らかにされ免疫増強作用や抗腫瘍作用が発表されています。
48. 牡蠣(ぼれい)
牡蠣(かき)の貝殻である。牡蠣の貝殻はカルシウム製剤として利用されているし、賦形薬として増量するのに広く利用 されている。主成分は炭酸カルシウムであるが、リン酸カルシウムなどの無機塩、鉄、アルミニウム、アミノ酸などが含まれています。近年、免疫増強作用のある多糖体が報告されています。牡蠣はカルシウムの補給としてだけではなく、漢方では精神の安定薬として不安、動悸、不眠、頭痛、めまい、耳鳴りなどの興奮症状にも効き目があります。 乳ガンなどに紫根、大黄などと配合される。
49. 番杏(ばんきょう)
日本の海岸をはじめ、太平洋岸各地の砂地に分布するツルナ科の多年草でsる。ツルナの全草を用いる。茎や葉は肉質で新芽や葉はホウレン草のように食用にできる。 日本ではツルナ、ハマナ、浜じしゃなどと呼ばれ食用にもされる。成分には鉄、カルシウム、ビタミンA,Bのほか酵母菌属にたいして抗菌作用のあるテトラゴニンなどが含まれている。一般には浜ぢしゃとして知られ、胃がんや食道ガンに効果があるということで、評判になったこともある。
50. 党参(とうじん)
中国の山西、陜西、四川省などに産するキキョウ科のつる性多年草、ヒカゲノツルニンジン及び同属植物の根を用いる。 上党人参という名から党参とよばれていたが、清代になってウコギ科の人参とは別のものとして区別されるようになった。 四川、湖北省のトウジンも川党と称され、党参のひとつとして用いられている。またセリ科のミントウジンの根は明党参といわれているが、これは党参の代用とはならない。 党参の成分はサポニン、イヌリンであるが詳細は不明である。 中国では党参は人参の代用品として幅広く用いられている。 党参には補益作用があり、抗ガン作用の研究も進められている。
51. 升麻(しょうま)
北海道から、九州、朝鮮、シベリアにかけて分布するキンポウゲ科の多年草、サラシナショウマの根茎を用いる。 そのほか、フブキショウマやオオミツバショウマの根茎を用いる。 若葉をゆで、水にさらしてたべることができるためサラシナの名がある。 日本市場で流通しているのは、北升麻で根が黒いため黒升麻とも呼ばれている。 成分としてはトリペノイドのシミゲノール類やその配糖体、クロモン誘導体のシミフゲン、ケロール、アミオール、フェノールカルボン酸のカフェ酸、ステロイドのシトステロールなどが、報告されており、解熱、鎮痛、抗浮腫作用や肛門部炎症を抑制する作用などが認められている。 近年、女性ホルモン様の作用が報告されており、前立腺ガンに有効であるという。
52. 紫河車(しかしゃ)
人の胎盤を乾燥したものを用いる。紫河車は健康な産婦の分娩時に排出された胎盤の血管を切り、何度も水で洗い煮たり、蒸したりした後に乾燥したものである。薬材は直径 十~十五センチの皿状で、一面は全体に凹凸があり、もう一面は羊膜に覆われて平滑で、中央に臍帯の残りがある。 胎盤にはさまざまな成分が含まれており、性ホルモン、 γ-グロブリン、ウロキナーゼなどがある。 胎盤埋没療法が研究され、リュウマチやアレルギー疾患に 効果があるといわれたこともある。 胎盤製剤は更年期障害や乳汁分泌不足の治療に用いられている。またウシ胎盤エキスは抗潰瘍剤として用いられている。 漢方では補気、補血、補陽の効能があり、不妊症、習慣性流産、インポテンツ、虚弱体質、結核、喘息、神経衰弱などに用いられる。
53. 三七(さんしち)
サンシチニンジンのことで、ウコギ科の多年草で雲南省から広西省に分布する。根を薬用とする。 田七、田七人参、田三七などと呼ばれる。 非常に高貴な生薬なので、金不換という名もある。 田というのは産地が広西省田陽、田東による。三七というのは地上葉が三つの葉柄にそれぞれ七枚の葉がつくことによる。 人参や竹節人参とよくにた植物である。 「止血の神薬」とも呼ばれる。外傷による出血、内出血、 消化性潰瘍の出血や疼痛、性器出血に用いる。煎じたり、粉末にしたりて用いる。近年、急性・慢性肝炎として「片仔広」の原料として広くしられている。また、抗ガン作用があるというので、研究がすすめられている。
54. 炉甘石(ろかんせき)
主な亜鉛鉱石にはセン亜鉛鉱と菱亜鉛鉱があるが、菱亜鉛鉱は炉甘石と呼ばれる。日本にはセン亜鉛鉱の鉱床はあるが、菱亜鉛鉱はほとんど産出しない。中国では広西、四川、雲南、湖南省などに産する。菱亜鉛鉱はスミソナイトと呼ばれ、主成分は炭酸亜鉛でる。純度の高いものは白色であるが、夾雑物により種々に着色している。一般に土塊状でガラス様の光沢があり、脆い、亜鉛は生物にとって必須の金属であり、成人では精液や前立腺、肝臓、腎臓に多く含まれ、亜鉛欠乏による味覚障害や傷の治癒の遅れが知られている。 炉甘石は江戸時代以来、結膜炎などの疾患や目洗い薬として長く使われてきた。 内服することにより、腫瘍を消去する作用があるということ現在は研究が進められている。
55. 白花蛇舌草(びゃくかじゃぜつそう)
本州から沖縄、朝鮮半島、中国、熱帯アジアに分布するアカネ科の一年草、双葉葎(フタバムグラ)の全草を用いる。 田畑にはえる雑草で、二枚の葉が対になっているためフタバムグラの名がある。中国で研究されている薬草で、成分としてはヘンリアコンタン、ウルソール酸、オレアノール酸、クマリンなどが含まれ、抗菌、消炎作用がある。漢方では清熱解毒、通淋の効能があり、肺炎、虫垂炎、急性腎炎、膀胱炎、毒蛇のかまれきずなどに用いる。最近では胃ガン、食道ガン、白血病に対する抗腫瘍作用が注目されている。
56. 海金砂(かいきんしゃ)
前立腺ガンにいい漢方薬として漢方界のあいだでは注目されている。 関東以西、朝鮮半島、中国、インドシナに分布するフサシダ科(カニクサ科)のつる状シダ植物、カニクサの胞子を用いる。 カニクサの名は子供が蟹をつるのに用いたことに由来する。 全草の生薬名を海金沙草あるいは金沙藤と呼ばれる。 立秋前後に胞子嚢のついた葉を陰干しし、紙の上で葉をたたいて胞子だけを集める。胞子は黄褐色の粉末状で、水に浮くが、熱すると沈む。胞子には脂肪油やリゴジン、葉にはフラボノイドが含まれる。漢方では、清熱解毒、利尿、通淋、消石の効能が知られている。
57. 華北大黄
中国などに分布するタデ科の多年草、ダイオウ類の根茎を用いる。ダイオウは主に中国西北部の海抜二千から三千mの高山に自生し、ギシギシと良く似た植物ですが、草丈は二mにも達します。中国、朝鮮産のダイオウの基原植物にはショウヨウダイオウ、ヤクヨウダイオウ、タングートダイオウ、チョウセンダイオウなどがある。 漢方では通便、清熱、活血化お、熱性疾患、興奮症状、おけつ、腹部腫瘤、無月経などに用いる。 近年前立腺ガンに効果があるとして、中国では広く研究されて いる。
58. 漢方処方
ガンいいとして使われている漢方処方は
一、 十全大補湯 (じゅうぜんたいほとう) 成分(人参、黄耆、白朮、当帰、茯苓、地黄、川芎、芍薬、桂枝、甘草)
二、 補中益気湯 (ほちゅうえっきとう) 成分(人参、白朮、黄耆、当帰、陳皮、大棗、生姜、柴胡、甘草、升麻)
三、 小柴胡湯 (しょうさいことう) 成分(柴胡、半夏、黄芩、大棗、人参、甘草、生姜) 以上の三処方はガンに効く漢方処方として一般に広く知られている処方である。 言うまでもなくガン治療は手術、放射線療法、化学療法剤がメインの手段であるがこれと免疫療法、漢方薬を併用して治療を進めていくのが一番適切なのではないだろうか。 上記の漢方薬で三者に共通しているのは人参である。 二者に共通しているのは黄耆、白朮、当帰、甘草、大棗 生姜などがある。 人参はご存知の高麗人参である、 人参には放射線治療の弊害を減らす作用があるという報告もある。これらの事実から人参を含有した補中益気湯や十全大補湯を治療の前から飲んでおくのがいいのではないだろうか。
59. 人参養栄湯(にんじんようえいとう)
古典「和剤局方」にも記載されている処方で、熟地黄、当帰 白朮、茯苓、人参、桂皮、白芍、陳皮、遠志、黄耆、五味子 甘草(大棗、生姜) この処方の内容をみていると、補中益気湯に比較すると、配合されていないのは柴胡、升麻でその他はすべて配合 されている。 十全大補湯に比較すると、配合されていないのは川きゅうのみで他の生薬はすべて配合されている。 古来より、肺結核などの慢性疾患や病後の衰弱による倦怠感、不眠、健忘、咳嗽などに用いられてきた。 免疫力の回復には有用な処方のようである。 十全大補湯、補中益気湯とともに研究対象にしても良い処方ではないだろうか。
60. 青黛(せいたい)
キツネノマゴ科のリュウキュウアイ、マメ科のタイワンコマツナギ、アブラナ科のホソバタイセイなどの葉や茎に含まれる色素を用いる。リュウキュウアイやホソバタイセイの葉は大青葉、根は板藍根という。これらの葉や茎を数日間水に浸して発酵させ、石灰を加えてかき混ぜ、浸出液が紫色になったら液面の泡を掬い取り、これを日干しにしてできた藍色の粉末を青黛と呼んでいる。 茎や葉に含まれるインジカンが発酵やアルカリを加えることにより、加水分解されてインドキシルとなり、次に空気による酸化をうけて藍色のインジゴに変わる。 青黛にはこのインジゴが含まれている。 漢方では清熱涼血、解毒の効があるといわれ、丹毒などの発疹や発斑を伴う熱病、小児のひきつけ吐血や喀血、鼻血などの出血、湿疹、腫れ物、蛇咬傷などに応用する。 中国では肝炎、脳炎、耳下腺炎、心筋炎、脳腫瘍などに対する研究が進められている。
61. 紫根(しこん)
日本各地や中国、朝鮮半島に分布するムラサキ科の多年草、ムラサキの根を薬用にする。根は紫色でナフトキノン誘導体のシコニン、アセチルシコニンなどの紫色色素が含まれる。 日本でも天平の頃から紫色の染色に用いられ、江戸時代には江戸紫として有名であるが、この天然のムラサキは近年はなかなか手に入らない。殆んどが栽培品である。 薬理的にはシコニン、アセチルシコニンには抗炎症、肉芽促進作用などの創傷治癒促進作用があり、紫根の抽出液には抗菌、抗浮腫作用がある。 近年抗腫瘍作用が注目され白血病や乳ガンなどへの研究がなされている。 特に牡蠣、忍冬と配合した紫根牡蠣湯の利用が望まれるところである。
62. 蓮肉(れんにく)
ヨーロッパ東南部からインド、中国、オーストラリアに分布するスイレン科の水生多年草の成熟した果実を蓮実、果殻ををとった種子を蓮肉という。 地下茎は蓮根である。 日本ではハスの実を食べる習慣はないが、中国では菓子や 中華料理の材料として、デンプンは乳幼児の栄養補助食 として用いられている。 果実にはデンプン、たんぱく質、ビタミンB1、ラフィノース、脂肪などのほか、胚芽部にはアルカロイドのロツシン、デメチルコクラウリン、メチルコリパリンなどが含まれる。 滋養強壮薬として一般的に用いられるが、抗腫瘍作用も研究されている。
63. 虻虫(ぼうちゅう)
大黄しゃ虫丸に配合され、腹部腫瘤に用いられる。 アブ科のウシアブなどいくつかの種類のアブのメスの全虫を乾燥して用いる。アブというのは、双翅目の昆虫のうち、ハエ、カ、ブユなどを除いたものを一括した呼称である。 薬用には吸血性アブが利用される。 中国では腹帯アブを用いる。血液凝固阻止作用、溶血作用が報告されている。月経異常、無月経、腹部腫瘤、打撲傷に用いる。 強い駆お血作用がある。腹部硬満、お血に用いる
64. 「ガンと食物繊維」
食物繊維は一日二十~二十五グラムを摂取するとよい。 大腸ガンの発症率が低くなる。
一、 不溶性食物繊維 ・便の量を増やす・・・・発ガン物質を薄める作用がある。 ・便の通過時間を短くする・・・・発ガン物質と大腸の接触時間を短くする。
二、 水溶性食物繊維 ・悪玉菌が作る発ガン物質の生産抑制 ・便の通過時間を短くする 食物繊維を多く含むものは、ビタミンB6も多く、大腸がんの細胞増殖抑制作用、抗酸化作用、血管新生抑制作用があると 報告されている。具体的な食品としては小麦胚芽、さつまいも、こんにゃく、かぼちゃ、にんにく、バナナが挙げられる。
65. 黄瓜(おうか)
インド北部のヒマラヤ地帯の原産で現在では世界中で栽培されて いるウリ科のつる性一年草、キュウリの果実を用いる。 わが国にはすでに平安時代にはすでに渡来していたが、長い間、 完熟して黄色くなったものを食べていたとされる。キュウリとは黄瓜(キウリ)のことである。 かってキュウリは苦かったため、評判は余りよくなく江戸末期頃までは普及しなかった。 果実の苦味質はククルビタミンCで、そのほかビタミンA,C 、イソクエルシトリンなどが含まれる。イソクエルシトリンには利尿作用があり、ククルビタミンCは抗腫瘍作用が報告されて いる。薬用には新鮮な果実を用いるが、わが国では蔓をきって得られる浸出液をキュウリ水としても用いられる。
66. 虎杖根(こじょうこん)
日本各地、朝鮮半島、台湾、中国などに自生するタデ科の多年草であるイタドリの根と根茎を用いる。地方によってはスカンポとかスイバともよばれる。春先にでる若芽には酸味があり、生のままや塩付けにして食用にする。 ただし蓚酸を多く含むため多食すると下痢や尿路結石の原因になったりする。戦時中にはイタドリの葉をタバコの代用にしたという。 イタドリという名は「痛みとり」に由来するといわれ、中国では若い茎の紅紫斑を虎の模様にたとえて虎杖(こじょう)といわれる成分にはアントラキノン誘導体のポリゴニンなどが含まれ、 清熱解毒、止痛、活血の効能があり関節痛や黄疸、生理不順、 火傷などに用いる。緑膿菌に対する抗菌作用が注目され、急性肝炎、新生児黄疸、気管支炎、骨髄炎などの臨床効果も報告され、抗腫瘍作用も研究が進められている。
67. 金銀花または忍冬
日本、朝鮮半島、中国に分布するスイカズラ科の常緑つる性植物、スイカズラの花蕾を用いる。スイカズラの名は花を口に含むと蜜のよい香りがして甘い、あるいは花弁の形が子供が蜜を吸う口の様子に似ていることに由来する。漢名では花の色が白から黄に変化することから金銀花と呼ばれ、葉が冬でも枯れないところから忍冬の名がある。一般には花のほうが茎葉よりも清熱、解毒にすぐれているといわれます。花の成分には蝋質のセリルアルコール、ステリンのほかルテオリン、ロニセリン、イノシトール、タンニンなどが含まれ、抗菌作用、抗真菌作用などが認められている。漢方では清熱、解毒の効があり、化膿性皮膚疾患や感冒、扁桃炎、乳腺炎、腸炎などの感染症に常用されている。清熱、解毒に着目してガン疾患への応用が研究されている。
68. 連翹(れんぎょう)
中国原産で日本にも伝わり庭木として植栽されているモクセイ科の落葉小低木である。 そのレンギョウの果実を用いる。中国ではシナレンギョウ、韓国ではチョウセンレンギョウなども代用品として利用される。 レンギョウは早春に葉に先立って多数の黄色い花をつけ、英語ではゴールデン・ベルと呼ばれたりする。成分はトリテルペノイドのオレアノール酸、リグナン類のフィリリン 、アルクチイン、ピノレジノールが含まれ、抗菌作用、強心利尿作用などが知られている。漢方では清熱、解毒、消腫の効能があり、熱性疾患や瘰癧、化膿性疾患に用いる。 特に漢方では皮膚化膿症の要薬である。 中国ではガンについて研究が進められている。
69. 冬虫夏草(とうちゅうかそう)
中国の四川、貴州、チベットなどに産するガの幼虫に生えたキノコの一種を用いる。このキノコはバッカクキン科のフユムシナツクサタケと呼ばれる菌類で、とくにコウモリガ科の昆虫の幼虫に寄生する。 幼虫の体に入った菌は菌糸を伸ばして成長し、やがて体内を完全に占領し、さらに長い柄を出してキノコが発生する。 幼虫の長さは三~八センチ、柄の部分は四~十センチある。 頭部がやや膨らんでいる。市販されている生薬は全長が10センチ前後、黄褐色である。 冬には虫の姿をし、夏に変じて草になると信じられていたため冬虫夏草の名があり、古来ウドンゲとともに吉祥のしるしとして知られていた。現在昆虫寄生菌を総称して冬虫夏草といっている。 蝉の幼虫に寄生したものを特に金蝉花といっている。 成分としてはコルジセピン、コルジセプス酸、ビタミンB12などが含まれ漢方では肺結核の咳、喀血、自汗、寝汗、インポテンツなどに使用される。 近年ガンに対する取り組みが始まっている。
70. 土茯苓(どぶくりょう)
中国からインドにかけて分布するユリ科のつる性落葉低木、ケナシサルトリイバラの根茎を用いる。生薬名を中国では土茯苓というが、本邦では山帰来と呼んでいる。 ケナシサルトリイバラの根茎にはサポニン、タンニン、樹脂などが含まれている。漢方では梅毒の皮膚疾患、化膿性疾患、頸部結核に用いる。古くから梅毒の治療薬および水銀剤の解毒薬として知られている。 近年中国ではレプトスピラ病や麻疹の予防や治療に用いられている。 また抗がんにたいする研究も進められている。
71. 前胡(ぜんこ)
本邦、朝鮮半島、中国に分布するセリ科の多年草、ノダケなどの根を用いる。日本にみられるノダケは紫色の花をつけるが、中国では白い花をつける白花前胡もあり、薬用には主に白花前胡を用いている。日本産には市場性はない。 ノダケの根にはフロクマリンのノダケニンやデクルシン、精油成分のエストラゴール、リモネンなどが含まれ、抗炎症抗浮腫作用などが知られている。熱性病による頭痛や気管支炎に用いる。抗ガン作用について研究されている。
72. 沢瀉(たくしゃ)
中国東北部や朝鮮、日本の北部に分布し、沼沢地や浅い水中にはえるオモダカ科の多年草、サジオモダカの塊茎を用いる。 北海道や信州で栽培されているが、市場品のほとんどは中国からの輸入品で、四川省の川沢瀉か福建省の建沢瀉が有名である。 沢瀉というのは水中にあって水を弾くことに由来する。 水面から出た葉が人の顔にみえるようになることから、オモダカの名がある。サジオモダカの根茎には多量のデンプンやアミノ酸、レシチンのほか、トリテルペルノイドのアリソールA、B,Cなどが含まれ、利尿作用やコレステロール低下作用、血糖降下作用が報告されている。 漢方では利水、清熱の効果があるとされ、中国では抗がん作用の研究も進められている。
73. 丹参(たんじん)
中国各地に分布するシソ科の多年草タンジン(サルビア草)の根を用いる。 丹参の名は根が赤いことに由来する。この色は根に フェナンスラキノン系の色素であるタンシノン、タンシノン 、クリプトタンシノンなどがふくまれていることによる。 中国では単味の錠剤、注射薬として利用されている。 配合剤として利用される冠心?号は、せんきゅう、降香、紅花、芍薬などとともに配合されている。 中国では肝炎、肝脾腫、甲状腺腫などの治療に用いられている。 丹参の注射薬は慢性肝炎、心筋梗塞に使われる。 抗がんに対する研究も行われている。
74. 赤芍(せきしゃく)
中国北部原産のボタン科の多年草、シャクヤクの根の外皮をつけたままのものを用いる。 外皮を除いたものを白芍という。また赤芍にはベニバナヤマシャクヤクや川赤芍の根なども用いられている。 これに対して白芍といえば栽培品種のみが用いられている。 赤芍は日本薬局方の芍薬に規格に適合しないため、中国産では白芍のみを芍薬として用いる。 シャクヤクの根にはペオニフロリンが含まれ、鎮痙、鎮痛、 鎮静、抗炎、抗潰瘍、降圧作用が報告されている。 白芍には補血、止痛の効に対し、赤芍には温熱病、無月経、腹部腫瘤、腹痛、出血、腫れ物などに用いる。
75. 牡丹皮(ぼたんぴ)
中国原産で、中国北西部に自生するボタン科の落葉低木、ボタンの根皮を用いる。 ボタンは中国を代表する国花で、古くから薬用や観賞用に栽培され唐時代には大流行したといわれる。 わが国では薬用としては奈良県で栽培されている。 薬用にするときには開花前に蕾を取り去り、苗から四~五年目の根を掘り取る。 根から木芯を抜き取り根皮としたものを生薬にする。 今日でも木芯を口にくわえて抜き取る作業が行われているという。 成分としてはペオノール、ペオノシド、ペオノリドのほかペオニフロリン、ガロタンニンなどが含まれる。 熱性疾患にみられる斑疹や鼻血、吐血、下血、月経不順 腹部の腫瘤、炎症などに用いる。
76. 五霊脂(ごれいし)
中国各地に生息するムササビ科のムササビの一種。このムササビの糞便を用いる。 かって五霊脂はオオコウモリの糞と考えられていたこともある。 体長十五センチから五十センチのムササビで、前後の足の間には飛膜があり、樹木の間を滑空する。 夜行性で木の実や若い枝葉なども食べる。主に中国の河北、山西などに産する。この生薬の断面は黄褐色で繊維状である。味は塩辛くて苦味があり、匂いは殆どない。 成分としてはビタミンA類が含まれている。漢方では活血化おう、止痛の効がある。 下腹部の腫塊を散ずるのに用いられることから、抗がん作用の研究が進められている。
77. 延胡索(えんごさく)
中国各地で栽培されているケシ科の多年草、エンゴサクや日本にも自生するエゾエンゴサク、ヤマエンゴサク、ジロボウエン ゴサクの塊茎や全草を使う。 延胡索の塊茎にはアルカロイドのコリダリン、テトラヒドロ パルマチン、コリブルビン、プロトピンなどが含まれ麻痺作用 、鎮静作用が認められている。 漢方では胸痛、腹痛、脇腹部痛、月経痛、打撲痛などに用いる 。延胡索は血中の気、気中の血を行らせる。止痛効果は乳香、 没薬よりも強く、酢で炒めれば止痛効果はさらに高くなる。 ガンの痛みを止めるのに研究されている。
78. 枇杷葉(びわよう)
中国の揚子江沿岸を原産とするバラ科の常緑高木、枇杷の葉を用いる。葉の裏の絨毛はブラシなどで取り除いて用いる。葉には精油が含まれ、その主な成分はネロリドールとファルネソールである。 アミグダリン、ウルソール酸、オレアノール酸、クエン酸、ビタミンB,Cなども含まれる。 薬理作用としては抗炎症作用や抗菌作用が知られている。 漢方では咳や痰、鼻血、嘔吐などに用いる。 食あたりや夏の下痢には縮砂と配合した和中散が知られて いるが、これの加減法である「枇杷葉湯」は江戸時代から明治にかけて江戸市中で暑気払いの妙薬として有名であり、街頭で売り歩く姿は江戸の風物詩であったという。大正時代静岡県内の禅寺から始められた「枇杷の葉(温圧)療法」は、あぶった枇杷の葉の表面を患部や全身におしあてたり、枇杷の葉を置いた上から加熱するという方法で、難病やガンにも効果があるという
79. 槐花(かいか )
中国原産でわが国でも庭木、街路樹などに植栽されているマメ 科の落葉高木、エンジュの花および花蕾を用いる。 槐花の成分はフラボノイドのルチン、クエルセチン、ケンフェ ロール、サポニンのカイカサポニン一~三などが含まれる。 ルチンは開花した花よりも蕾に多く含まれ、毛細血管強化作用があり、かって脳出血の予防や高血圧に効果があることが注目された。またルチンやクエルセチンには抗炎症、抗潰瘍、鎮痙作用も報告され、抗がん作用の研究材料にもなっている。
80. 海藻(かいそう )
温帯から熱帯にかけての海に広く分布するホンダワラを用いる。漢方で海草といえば、この褐藻のホンダワラ類をさし全藻を用いる。 ホンダワラ類は海草のなかで、最も進化したものといわれ、日本沿岸には約六十種の生育が知られている。 全藻にはアルギニン酸やマンニトール、ヨウ素、種々のミネ ラルが含まれ抗凝血作用、脂質降下作用、降圧作用などが認められている。山間区域ではヨウ素が不足するため甲状腺 が腫大することがあるが、海草が有効であることは古くから知られており、海藻を食べると良い。 海藻の成分であるヨウ素は甲状腺成分として代謝の調節を行っている。 漢方では軟堅散結・利水消腫の効能があり、甲状腺腫や頸部リンパ節腫、腹部腫塊、腹水、脚気、睾丸腫痛な用いる。特に頸部腫瘤の常用薬として有名である。
81. 訶子(かし)
インド、ビルマ原産で中国では雲南、広東、チベットなどに栽培されている。シクンシ科の落葉高木ミロバランの果実を用いる。 訶梨勒とよばれていた。訶子はタンニン原料として有名である。タンニンの成分としてはケブリン酸など、関連ポリフェノールとしてエラグ酸などが含まれている。煎じ液には強い抗菌作用が知られている。漢方では咳、下痢、血便、性器出血、帯下、に常用される。近年、この訶子と藤瘤、菱実、ヨクイニンとの配合したものに抗癌作用があるという報告がある。 (WTTC)
82. 羅摩子(らまし)
日本全土および朝鮮半島、中国、東南アジアに広く分布するガガイモ科のつる性の多年草、ガガイモの全草を用いる。 このガガイモの果実を羅摩子という。 茎を折ると乳白色の汁がでる。秋に結実する果実は長さ 十センチ以下の細長い袋状で、熟すると二つに裂けて中から多くの長い綿毛をつけた種子がでてくる。 葉や種子は乾燥してからすりつぶし粉末にして、滋養強壮、強精剤として使われている。 全草にはプレグナン誘導体が含まれている。 強精と催春の効果は極め付きといわれる。 古典には「家を去る千里羅摩とクコを食うなかれ、精気を補益し、陰道を強精にする」といわれている。 一日量五グラムを煎薬又は浸薬として三回に分服する。
83. 香附子(こうぶし)
全世界の温帯に分布し、本邦では関東以西に自生するカヤツリグサ科の多年草、ハマスゲの根茎を用いる、主に砂浜や川原も砂地に生えるが、畑や公園の雑草として嫌われている。 ハマスゲの根茎には芳香があり、附子を小さくしたような形のため香附子という。 根茎には精油成分としてシペロール、シペロン、シペレン、コプソンなどが含まれ、香附子エキスには鎮痛作用や子宮弛緩作用、抗菌作用が知られている。 胃のふさがれた感じや脇腹部の張満感、腹痛、頭痛、月経痛、月経不順に用いる。 特に肝欝による脇痛、気滞による上腹部痛、生理痛など各種の痛みに使われるので、漢方の抗ガン薬といわれるものと併用したらいかがだろうか。
84. 瓦りょう子
アカガイ貝の貝殻を用いる。肉もかんと称して薬用にされる。 大きさは殻長四~八センチとさまざまであるが、いずれも心臓形で殻頂から放射状に凹凸がある。色は白の地に褐色の殻皮でおおわれている。主成分は炭酸カルシウムであるが、有機質や微量元素も含まれる。 ルイレキや腹部腫瘤になどに用いる。 甲状腺腫や頸部リンパ節腫には海藻・昆布などと配合し、腹部腫瘤には三稜・莪朮・別甲などと配合する。強火でやいた「瓦りょう」は制酸止痛の効があり、胃潰瘍、胃炎、胃酸過多に使用する。
85. 姜黄(きょうおう)
東南アジア、中国南部に自生するショウガ科の多年草、ウコンあるいはハルウコンの根茎を用いる。ウコンとハルウコンはよく似た植物であるが、ウコンの花期は秋であるのに対し、ハルウコンは五~六月に花が咲く。 日本でいうウコンは姜黄、中国のウコンはハルウコンである。 日本で流通しているウコンはここでいう姜黄である。 ウコンの乾燥粉末はカレー粉に含まれる香辛料のターメリックであり、ウコンの根茎には精油が含まれ、その精油には ターメロン、ジンギベレンなどが含まれる。 その他、クルクミンが含まれる。クルクミンには利胆作用があり、ウコンと同様の効能があり、胸腹の張痛、産後の腹痛、生理痛、腫瘤、腕の痛み、打撲症などに用いる。
86. 桃仁(とうにん)
桃を食べ終わった後の残りかすの種が薬になるのだから、江戸時代には利用されたに違いない。塊状の種子を薬用にする。 脂肪油、アミグダリンなどが含まれ漢方では消炎、鎮痛の目的で月経困難、下腹部痛などの婦人病に配合される。 花も陰干しにして「白桃花」という生薬になり、煎じて飲めば利尿剤や強い下剤となる。 葉と枝は刻んで風呂に使うと桃葉湯といってあせもや湿疹のできたときに良い。
87. 肉豆く(にくずく)
原植物はニクズクという熱帯性常緑樹で高さ十~二十メートルに伸び、枝が盛んに出て円錐形の樹冠を作る。果実は球形で熟すると二つにわれ紫赤色の長楕円形の種子を露出する。 精気の興奮に役立ち、強壮薬となり、消化を促進し、香料にもなる。ニクズクは欧州では古くから薬用、香料として使われてきた。特にアラビア、ペルシャでは性的強壮剤として珍重された。主成分はミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸のほか精油としてオイゲノール、リナロール、ゲラニオール、ボルネオール、サフロールなどが確認されている。 中世の欧州では媚薬としても利用された。 古代から中世までは黄金と同価値に扱われていたほどだったが、現在は栽培が普及し安価に入手できるようになった。
88. 真珠(しんじゅ)
ウグイスガイ科やイシガイ科などの貝の体内にできる球体を真珠といい、その貝殻の真珠層を珍じゅ母(ちんじゅも)という。本邦ではウグイスガイ科のアコヤガイが有名である。 装飾用にならない「シジミ真珠」を薬用にする。 真珠の成分は殆どが炭酸カルシウムで、有機物としていくつかのアミノ酸を含んでいる。薬理的には抗ヒスタミン作用が知られている。動悸、心悸亢進には単味で使用され、高熱による痙攣には犀角あるいは石膏と併用する。 消化性潰瘍には単独でも使用され、甲状腺ガンには他の漢方薬と配合される。 又、結膜炎には内服し、角膜混濁には点眼薬として外用する。 江戸時代以来、目薬には配合されていた。
89. 狗背(くせき)
日本の奄美諸島以南、台湾、中国南部、東南アジアなどに分布するシダ植物、タカワラビ科のタカワラビの根茎を用いる。 秋から冬にかけ地上部がかれたときにこの根を採取する。 長く這った根茎の形が犬の背骨ににているので狗背といわれ、根茎と葉柄の基部の周囲が黄色の毛に覆われているため金色狗背ともいわれる。シシガシラ科のオオカグマの根茎も狗背として用いられている。 デンプン三十パーセントのほか、アスピジノールなどが含まれる。 漢方では肝腎を補い、筋骨を強め、風湿を去る効能があり、腰や背中、関節の痛み、足腰の衰弱などに用いられている。 近年、白血病に効果があるというので研究が進められている。
90. 陳皮(ちんぴ)
ウンシュウミカンの皮を用いる。中国ではオオベニミカンやコベニミカンなどの果皮も利用されている。ウンシュウミカンは日本原産で江戸時代にみつけられた。陳皮はこのウンシュウミカンの果皮であるが、わが国で自給できる数少ない生薬の一つである。古いほうが良品とされる。果皮にはリモネンやテルピネンを成分とする精油、フラボノイド配糖体のヘスペリジン、ナリンギンなども含まれ、健胃、蠕動運動促進、中枢抑制・鎮静作用、抗炎症作用などが知られている。 黄色成分β-クリプトキサンチンに発ガンプロモーションを抑制する作用がある。
91. 王不留行(おうふるぎょう)
ヨーロッパ、アジアに広く分布するナデシコ科の一年草、ドウカンソウの種子を用いる。わが国には江戸時代に渡来し、おもに観賞用に栽培されている。中国の広東省産はクワ科のオオイタビの果実であり、輸入されている王不留行はこのオオイタビであろうといわれている。 ドウカンソウの種子にはバクセゴシド、バッカロシドなどのサポニンが含まれる。漢方では止痛、通経、通乳の効があり、乳汁不足、乳腺炎、月経閉止、難産、腫れ物、外傷などに用いる。腫れ物に利用されている点から、抗がん剤としての研究が進められている
92 .紅参(こうじん)
紅参は病後の疲労回復や、術後の免疫力回復や再発防止にも最適である。これはウコギ科のオタネニンジンの根を蒸したあとに乾燥したものを用いる。 せいろで二~四時間蒸したあとに熱風乾燥する、赤褐色で半透明の人参になる。紅参にするのは本来は保存性を高めるためのものであり、清の時代に中国から高麗に伝えられた修治法といわれている。紅参は蒸す過程で若干のサポニンの損失が認められるが、加工の際に新しいサポニンも生成されるといわれており、蒸すことで有効成分が溶出されやすくなっているともいわれている。 結論として、ガン摘出手術ごの疲労回復にはもってこいといつてよさそうである。
93. せんじょ
ヒキガエル科のシナヒキガエル、ヘリグロヒキガエルなどの 全体のまま乾燥したものを用いる。 これらの耳後腺および皮膚腺からの分泌物が「センソ」であり 、皮、舌、肝、胆なども薬用にされる。 シナヒキガエルは中国全土に分布し、泥の中や岩石の下に 生息する体長十センチ以上のカエルで、皮膚には多数のイボが密に分布している。 ヘリグロヒキガエルは中国南部に分布し、体長は十センチ以下で全身がざらざらした黄褐色のカエルである。 これらヒキガエルの耳の後ろには耳腺があり、有毒な乳液が分泌される。日本ではヒキガエルのことをガマというが、中国でのガマはヌマガエルのことである。 解毒、腫れ物、腹部腫瘤、浮腫などに用いる。 ガンへの研究も進められている。
94. 玄参(げんじん)
中国の江蘇、安徽省などで分布するゴマノハグサ科の多年草で、ゲンジンの根を用いる。日本や中国の一部で近縁植物のゴマノハグサの根を用いることもある。ゴマノハグサとは葉の形がゴマの葉に似ていることに由来し、玄参とは黒い人参という意味である。ゲンジンの根にはハルパガイド、スタキオースなどが含まれ、降圧作用や解熱抗菌作用が報告されている ばかりでなく、激しい熱病、結核、頸部リンパ節腫、咽喉 腫痛、吐血、腫れ物などに応用される。 熱病にみられる脱水症状や陰虚による熱症状に用いる。 ガン患者への応用も研究されている。
95. そう角刺
わが国ではマメ科のサイカチ、中国ではトウサイカチの刺を用いる。サイカチは中部以南、四国、九州に分布し、川原など水辺に生える落葉高木で、カワラフジノキともいわれ、サイカチの名は種子のそうかく子に由来する。サイカチの幹や枝には太くて鋭い刺があるが、刺は枝の変化したものである。 かってはわが国でも採取していた。 樹皮や刺にはアルカロイドのトリアカンチン、タンニンが含まれる。トリアカンチンにはパパベリン様作用があり、高血圧や喘息、潰瘍などに有効といわれている。 漢方では消腫、解毒、排膿の効能があり、腫れ物やできもの、らい病、乳腺炎などに用いる。 これもガンへの研究が進められている。
96. 天葵子(てんきし)
中部地方以西の日本各地、朝鮮半島、中国などに分布するキンポウゲ科の多年草、ヒメウズの全草を「てんき」といい、塊根を天き子といっている。 根がウズに似て小型なためヒメウズといい、形が鼠の糞に似ているため千年老鼠屎という異名がある。 田畑のあぜや石垣の隙間などに生える雑草で、四~五月ころに小さな花を下向きにつける。根にはアルカロイド、ラクトンなどが含まれ、抗菌作用が知られている。 漢方では清熱、利尿、解毒の効があり、皮膚の化膿や腫れ物、乳腺炎、蛇による咬傷や打撲傷、膀胱炎などに内服あるいは外用として用いる。 外用としては新鮮な天葵子の根をすりつぶした汁を用いる。 近年、中国では注射液による上気道炎の治療や乳癌や肝癌、リンパ肉腫などに対する臨床研究が行われている。
97. 茶葉(ちゃよう)
中国原産のツバキ科の常緑小低木、茶の葉の乾燥したものを用いる。中国では紀元前から薬用とされ、紀元三世紀頃に嗜好品とされはじめ、八世紀の唐の頃に栽培や製茶が普及した、一般に普及している茶は加工法で大別すると乾燥茶の緑茶、発酵茶の紅茶、半発酵茶の烏龍茶に大別される。 茶の葉を摘んでそのまま放置すると葉のなかの酸化酵素により 黒く変化する。このため緑茶は採取した新鮮な若葉をせいろのなかで、高温加熱して酸化酵素の作用を止め、さらに加熱しながら揉んで乾燥させて製品化する。 日本の煎茶や玉露、番茶は緑茶の種類である。紅茶は生のまま 室内でしおらせ、積み重ねて発酵させた後に加熱乾燥したもので特有の芳香が生じる。茶にはカフエイン、テオフィリン ビタミンC、タンニン、フラボノイドが含まれカフェインは中枢神経興奮のほかに、強心、利尿、血管拡張の作用があり、茶葉がカフェインの主な製造原料となっている。 近年カテキン、エピカテキンなどの茶ポリフェノールに口臭抑制、ウイルス感染阻止、抗コレステロール、抗ガンなどの作用が確認され、注目されている。
98. 松葉(まつば)
北海道南部から九州、朝鮮半島、中国東北部に分布するマツ科の常緑針葉高木、アカマツの葉を用いる。中国ではタイワンアカマツやユショウなどの松の葉を松葉という。 日本の二葉松にはアカマツのほかにクロマツがあり、クロマツが海岸に沿って多くみられるのに対し、内陸ではアカマツが多い 。木肌が赤褐色のためにアカマツという。アカマツの葉にはピネン、ジペンテン、リモネン、フェランドレン、ボルネオール、ビタミンA,C、クエルセチンなどが含まれ、クエルセチンやビタミンCには血管壁を強化する作用がある。 漢方ではリュウマチによる麻痺や関節痛、湿疹、浮腫、打撲傷 などに用いる。古来松葉は「仙人食」といわれ、穀類を断って松葉を食べると体が軽くなって不老長寿が得られるという。 民間療法でな松葉を毎日噛むと血圧が下がり、便通がよくなり脳卒中後遺症にも良いという。 免疫力をつけるので、ガンにもいいというので一部で研究され ている。
99. 和厚朴(わこうぼく)
ガンにきくかどうか、研究されている生薬は数かぎりなくある。今世紀に入ってからもガンを征服し治療することは人類にとっては悲願である。あらゆる方面の材料が取り上げられているが、決定打はまだない。和厚朴は北海道から九州まで分布するわが国固有のモクレン科の落葉高木、ホウノキの幹や枝の樹皮を用いる。ホウノキは建築材や建具、家具などに用いられるほか、版木 やかっては下駄の材料にも用いられた。 葉は大きくて香りが良いため、ご飯を盛ったり、ホホバ味噌などに利用されている。 中国産の厚朴はカラホウなどの樹皮や根皮である。 中国産は唐厚朴である。 和厚朴には一パーセントの精油が含まれそのほとんどはセスキテルペノイドのオイデスモールの混合物であり、またアルカロイドのマグノクラリン、マグノフロリンなどが含まれエキスには中枢神経抑制作用、クラーレ様作用、抗潰瘍作用が報告されていて、抗ガン剤として研究が進められている。
100.竹節人参(ちくせつにんじん)
竹節人参が医療に用いられるようになつたのは、江戸時代初期寛永年間に清国の帰化人、何欽吉が薩摩においてこれを発見し採集して使用したのが始まりとされている。正倉院に「竹節人参」と題記されたものがあるが、これは後人が書き誤ったもので、明らかにオタネニンジンの根茎部であって、今日の竹節人参ではない。
ウコギ科のトチバニンジンの根茎を、通例、湯通ししたものである。葉がトチノキの葉に似ているところからトチバニンジンの名前が付いた。
サポニン約7%を含有し、主サポニンはチクセツサポニンであるが、チクセツサポニンIa、III、I(ジンセノシド)も含有する。
鎮静、鎮痙、解熱、鎮咳、去痰、腸管自動運動増強、ストレス性潰瘍抑制 (チクセツサポニンII) 。コリン様作用、ヒスタミン遊離、消化性潰瘍抑制 (非サポニン分画) 。血糖低下 (粗サポニン分画、チクセツサポニンV) 。
去痰、解熱、健胃薬として用いる。人参にくらべて新陳代謝機能の賦活作用は劣るが、健胃、解熱、去痰作用は勝るといわれる。吉益東洞は竹節人参を好んで用いた。免疫力を高める作用があり、心下痞硬には人参より効果がある。近年はがん患者にも好んで使われるようになってきた。


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