中屋彦十郎がお届けする、金沢、生薬漢方薬についてのメールマガジン
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中屋彦十郎薬舗による「尾山のくすり大将」第23号 2002年9月9日
麝香(じゃこう)について
麝香(じゃこう)について
また薬のお話で恐縮ですが、少し脱線しながら書いてみたいと思います。
麝香は麝香鹿の雄の生殖器と臍の中間にできる御椀をふせたような袋状のものです。
麝嚢と呼ばれる部分を麝香鹿を捕獲して切りとります。
切り裂き取り出すときはその匂いは強烈で頭も痛くなり、死にそうなくらいだといわれます。
殺さないと取りだすことはできないと思います。鹿の一種で中国雲南地方の高山地帯に生息しています。
鹿よりは随分と小ぶりです。現在ではワシントン条約(希少動物保護に関する国際条約)で捕獲禁止になっています。
何故かこれを配合した製剤が一般市販されているのも不思議です。
この点を問いただすと、沢山買って在庫しているというのです。
何十年先の分まで在庫しているとはとても考えにくい話で、果たして承認された分量を配合しているのか、担当者に聞いてみたいものだと思います。
生薬はその分量が間違いなく配合されているかどうか確認できないのが一番難しい点であります。 ともかく、麝香と牛黄は高貴薬という点で漢方の双璧です。
麝香は1匁(3.75グラム)40,000円位、牛黄は1匁(3.75グラム)20,000円です。
麝香は御椀を伏せたような鶏卵大の大きさで御椀部分は固い毛でおおわれていて、底の部分は扁平で皮でできている。
この皮の部分を十字に切り裂き中身を取り出す。小さな粒状や、粉状のやや粘着性のある黒褐色のものです。このままでは他の薬と配合してもひっついてしまうので倍散にして調製する。
普通は100倍散位でしょうか。倍散に使用する生薬はその製剤に配合されている薬で乾燥性のいいものが最適です。私は茯苓を使いました。
麝香を袋から取り出して調製する間、その匂いはそのあたりに充満し手や衣服にも染み付きます。成分はムスコンが主成分でその他揮発性成分などが確認されています。
効能は興奮剤、強精剤、気付けに利用されています。
マスクメロンの名前もこのムスクから取って名付けられています。
私はこの麝香を触った日に、手も体も洗って、金沢の歓楽街片町に出かけた事があります。今から30年近く前の話ですが、当時は夜の街の全盛期でホステスを50人も抱えている大きなクラブ、確かロイヤルボックスという店です。
女の娘は今の店のようなスーツ姿ではなくナイトドレスで着飾っていました。「なーさん、踊ろう」と言われ、その気になって踊ってみたところ「臭い、オシッコの腐ったような匂い」だというのです。
「何言ってるんだ、高級香水麝香の香りだぞ」といっても、誰からも相手にされず、しょんぼりと帰ったのを覚えています。
後年、今の仕事に就いてから、香水に使うムスクは合成された化学品の環状ムスクであることを知りました。この他、偽造品として麝香猫、麝香鼠の香嚢を混ぜたものがあるので、くれぐれも注意が肝心です。
まあ、あれ以来、麝香をさわった日は一人しみじみ、おでん屋で一杯やることに決めました。
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